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第2話
樹は、陽介の勤務する男子高校の生徒だ。
陽介が樹のいるクラスを担任として受け持ったことは3年間で1度もなかった。しかし、選択科目の生物を1年生から履修し続け、好成績を上げてくる彼は、陽介の中で目立っていた。授業内容だけでなく、生物に関する様々な質問を積極的にしてくる樹に対して、生物教師として単純に嬉しかった。しかも、ある程度整った容姿に、清潔感のある短い髪型、バスケ部で培ったと思われる高身長。もしも、陽介がゲイじゃなくても、魅力的な男だった。
陽介が樹に惹かれるようになったのは、そう時間がかからなかった。
だから、男子高校には勤務したくなかったのに、と樹に惹かれ始めた頃、陽介は思った。
とは言え、ゲイを隠している陽介が、本当の理由を言って異動を拒否することも出来ず、うっすらと危惧していたことが起こってしまったのだ。
しかし、生徒とどうこうなろうとは、思わなかった。だから、自分さえ気をつけて自戒してれば大丈夫だと陽介は思っていたのだった。
だが、それは呆気なく砕けた。
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