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第160話

美空…お前が欲しくて堪らない…好きだよ… 「やば…泣けてきた…」 溢れ出す涙をそのままに暫く踞っていた その時電話がなる… 「もしもし…」 『もしもし!むっくん!』 「何?雛。何のよう?」 相手は同じクラスの雛菊だった。葉月先輩の友人である弥生先輩のことが好きだけど素直になれず弥生先輩の熱烈アプローチから逃げ回っている 『むーくん…?何かあった?』 「何もねぇよ。どうしたの?」 『みーくんと何かあったんでしょ?今からそっち行く』 「来なくていい、お前さ自分の可愛さ自覚しろ。一人歩きなんてしてたら誰かに襲われるぞ」 雛菊は美空より小柄で天使と揶揄される見た目を持つ。女の子にしか見えないその風貌のせいで何度か危ない目に遇っていてその度弥生先輩に助けられている。 ここにこようとして何かあったら…ゾクリと背筋が凍る 『でも…むーくん放っておけないもん!!』 『ひーなーちゃーん!!』 電話の向こうからヘラヘラした軽そうな声が聞こえた。弥生先輩だ… 『ちょ!!弥生ちゃん!!いきなり入ってこないでよ!!』 『だーれとお話し中?』 『うわっ!ちょっと!返してよぉ』 『もっしもーし。ひなちゃんの彼氏の弥生だよーん。うちのひなちゃんに何のよう?』 「俺ですよ。弥生先輩。睦月です。掛けてきたのは雛の方」 『なぁんだ…むっくんかぁ…何かあったの?』 「え?」 『元気ないから。…あー…だからひなちゃん悲しそうな顔してるんだね。…ん~今から行く!じゃね』 こっちの話も聞かずに切られたスマホを見つめる… 「あの人…強引だよな…雛から伝染した?」 とりあえず来るということだから部屋を片付けないと…美空との情事後のままだから… 片付け終えたとき二人が訪れた ドアを開けると雛が勢いよく飛び付いてきた 「むーくん!!大丈夫?」 「ひーなちゃん彼氏を差し置いて他の人に包容?酷くない?」 「彼氏じゃないもん!」 「相変わらずですね」 「そう?俺ひなちゃん愛してますからね…で?睦月くん。美空くんと何かあった?」 「俺そんなにわかりやすい?」 「ううん。そんなことない。周りはわかんないと思う。でもねずっと仲良くしてきたから俺たちにはわかるよ。君が向けてる美空くんへの視線も美空くんが向ける葉月への視線も…葉月はね自分でも気付いてない。言い聞かせてもわかってくれないんだ」 「美空にフラれたとこです。もう何度目だろ?わかんない」 「ん~みーくんは本当に自分に向けられる好意には疎いもんね…でも側にいたいんでしょ?」 「はい…どんな形でもいい…側にいたい」

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