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第9話 可愛いからって許さない(許しちゃう)

【卯月視点】 「はいっ」 「……へ?」 「今日からうっちゃんは、化学準備室でお昼ご飯食べよう?」 りっちゃんにニッコリとほほ笑まれて、一度美術室の作業机に置いた弁当を再び持たされた。 「な、なんで?南條先生は食後のコーヒーだけ用意してくれるって、だから弁当はここでみんなと食べていいんじゃ……」 「そんなの、先生は本当は少しでも長くうっちゃんと一緒に居たいに決まってるでしょ?」 「いや……ていうか、俺の方は南條先生と一緒に居たいと思ってないから。思ってないから」 大事なことなので二回言いました。――そしたら。 「行っておいでようっちゃん、憧れの南條先生と二人でランチなんて夢みたいじゃん!」 「うんうん、そんで放課後四人でカフェでも行こうよ!どんな話したのか教えて」 あいちんとかなやんの、りっちゃんへの援護射撃がキター……!!なんで揃いも揃って俺を南條先生の元に行かそうとするの?きみたちは絶対面白がってるだろ!?俺、別に南條先生のこと好きでもなんでもないんだけど。ただの俺的最強攻め様としか思ってないんだけどー!! ていうか、なんで俺が告白されたこともうあいちんとかなやんにバレてるのかな??んん?りっちゃん?? ジト目でりっちゃんを見たら、舌を出しててへぺろ☆ってされた。可愛いからってなんでも許されると思ってるのか……!! けど許しちゃう!くやしいっ! 「さ、うっちゃん行ってらっしゃーい!」 「雨宮氏、これはリアルで受けとやらを体験できる大チャンスでござるよ」 「いつから腐男子になったのかなぁ!?永田氏は!」 くそう、みんなで面白がりやがってぇ……!!そんなに俺がまた南條先生に鼻血を噴き付けるところが見たいのかっ!!見られてないけど!! * そしてまたやってきました、化学準備室。  なんで俺、バカ正直に来ちゃったんだろう……いや、だって行かないとあとでりっちゃん達に何言われるかわかんないし。姉さんたちにも何やってんだよってドヤされるし。 うん、これは俺の意志じゃない!!そうと決まれば! ガラッ 「へあっ!?」 「……雨宮?」 ドアをノックしようとしたら、ドアの方が先に開いた。俺は驚いて思わず変な声を出してしまった。俺の目の前に現れたのは、勿論南條先生その人で……。 「もう会いに来てくれたのか?」 俺を見て、心底嬉しそうに微笑む南條先生。こんな顔、授業でも妄想の中でも一度も見たことない。ヤバい、イケメンすぎる……! 一気に全身の体温が上昇して、心臓が早鐘のように打ってるのが分かる。やばい、血圧が上がってまた鼻血噴く!! 思わず両手で鼻の辺りを押さえた。そんな俺の仕草を見て、南條先生はぷっと噴き出した。 「ははっ!また鼻血が出そうなのか?雨宮、普段から血圧高い?まだ若いのに危ないぞ」 「……!?」  南條先生が、声を出して笑ってる…!?  私雨宮レポーターは超貴重な映像を捉えました!ただし放送することはできません!!何故ならあまりのかっこよさに気絶者が多数出そうだからですぅぅ!! 「ほら、立ってないで入れよ」  鼻を抑えていた手を優しくほどかれて、俺は化学準備室の中へと招かれた。

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