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第41話 ただでは起きない主人公

「『俺の親友が可愛すぎて辛い』……これ、夏コミの新刊?うっちゃん」  放課後の美術室。俺の持ってきた原稿をパラパラと読みながらりっちゃんが尋ねた。 「うん、中間テストも終わったし今日から原稿手伝ってくれる?昨日下描きまで一気に終わらせたよー」 「それは勿論いいけど……ねえ、なんで南條先生×うっちゃんじゃないの!?これって関口×吉村でしょ!?ありえないんだけどぉ!!」  ハハハ、言うと思った。その質問は想定内だよ! 「自分ネタにするとか本当無理だから……」  にっこり笑って答える。葉月姉さんにノンフィクションを描けばいいと言われたけど、やっぱり無理でした!!自分ネタとかほんと、ハードル高ぇわ!!高すぎるわ!! 「でもこの話なかなか萌えだよ~、りっちゃん」  既に読み終えたあいちんが横から援護してくれた。いつの間にかりっちゃんの持っていた原稿はかなやんと永田氏に回されている。 ……ていうかなんで永田氏まで読んでるの?BL興味ないでしょ?あるなら大歓迎だけど。 「吉村くん受け、やっぱり王道でいいね!」  かなやんはニヤニヤしながら読んでいる。俺と同じで可愛い受けちゃんが好きだもんね。 「確かに可愛いけど……それなら受けはうっちゃんがよかったぁ~。モブ関口に凌辱されるうっちゃん……やば、超萌えるんだけど!」 「なんか物騒な単語が聞こえたけど!?やめてよりっちゃん!!」  モブ姦とか俺、地雷だから!!紆余曲折あっても幸せなのが好きだから!!  今回、葉月姉さんと皐月姉さんに殺されるのを覚悟して(合同誌なのです)夏コミ新刊は参加見送ろうかなと思ったけど、まぁ思い付いたらサラサラ描けたよね!  関口くんも吉村くんも人間的にはあんまり好きじゃないんだけど、妄想すればあら不思議、いい仕事してくれるじゃないかー!一気に心の距離が縮まったよ! 「なになに……YはずっとN先生のことが好きだったけど、N先生には最近彼氏ができて……これは雨宮氏のことでござるな。それを知った親友のSが『あんな奴やめて俺にしろよ!』とYを慰めてそのままエロ展開になる、と……すごいな、これが噂の腐ィルターというやつでござるか……雨宮氏との間にものすごい隔たりを感じたでござる」  突然永田氏が俺の原稿の解説を始めて――案の定、ドン引きされた。 「だったら読まなくていいよ、永田氏……」 「Yが実は男の娘だったという設定にすれば拙者、百倍萌えるのでござるが」 「「「はあぁあ!?いらねぇよそんなクソ設定!!!」」」  女子三人に異口同音に大反対されて、永田氏はビクッ!としたあと黙りこんだ。  一度離れてしまった俺と永田氏の距離がまた少しだけ縮まった!女子ってこわいよね!  突然、美術室のドアがガラリと開いた。 「雨宮卯月、いるか?」  そこには、美術室には似つかわしくないまっさらな白衣を着た仏頂面のイケメン教師が立っていた。そのイケメンとはもちろん…… 「南條先生!?」 「あ、いた。ちょっといいか?」 「は、はぃぃ!!」  先日、俺がお付き合いすることになった南條志信先生その人だった。 なぜ南條先生が美術部に!?俺に用事とかって……うわわわわ!!ヤバイ、いきなりすぎてテンパるぅ!!  突然の先生の訪室にりっちゃんたちもビックリしている。そしてヒソヒソし始めた。 「南條先生、うっちゃんとお付き合いしてるの隠す気ないのかな……」 「それならあたしたちも全力で包み隠さず応援していく所存でありますが……」 「いやいや待って、まだ先生が生徒を呼び出しただけだからね!?」 「雨宮氏、はよー行くでござる」 「う、うん!」  永田氏に軽くケツを蹴られて、俺は南條先生のもとに行った。  廊下に出てドアを閉める。別に聞かれて困るような話をするわけじゃないと思うけど、念のためだ。 南條先生と二人で話すのはまだちょっと緊張する。一応お付き合いを始めて、もう三週間はたつんだけど……。 「南條先生、どうしたんですか?」 「いや、今日はA組の授業がなかったから顔を見に来たというか……」 「ええ!?」  南條先生は微笑みながらそんなことを言った。さっき俺を呼び出したときの仏頂面とは全然違う表情(かお)をしている。え、ちょっと待って、かっこよすぎて死にそう。 「そ、そうですか、こんな顔でよければいくらでも見てってください……!」 「ふふ、今日も可愛いな卯月」  南條先生はわざわざ美術室まで俺を殺しに来たのかな!?いやでも、まだ死にたくない! せめて新刊の原稿を仕上げるまでは!! 「今日は一緒に帰れるか?」 「あっ……ハイ」 「家まで送ってくから、部活終わったら駐車場で待っててくれ」 「ハイッ」 「じゃあ、あとでな」 「ハイ……」  南條先生は白衣のポケットに両手を突っ込み、モデルのようにカッコよく踵を返して廊下を颯爽と歩いて行った。 あああ……後ろ姿も超かっこいい……!! 「……うっちゃん、後半ハイしか言ってなかったよ」 「ぅえっ!?」  背後のドア向こうからりっちゃんの声がした!! 「だめだよ~うっちゃん、もっと気の効いたこと言わないと。ボクも会いたかったとか、一緒に帰れて嬉しいですとか!南條先生は大人なんだからそんなんじゃ早く飽きられちゃうよ?」 「ええええっ!?」  あ、あ、飽きられる?――飽きられるぅ!?!?  焦ってドアを開けたら、すぐそこには耳をすませた格好のりっちゃん、あいちん、かなやん、永田氏がいた。 「俺飽きられんの早くない!?単調な返事を繰り返しただけで世間では飽きられるもんなの!?恋愛のハードル高すぎない!?」 南條先生がかっこよすぎてついつい言葉を失ってしまう問題、深刻だった!! 「ジョーダンだようっちゃん!まったく可愛いなぁこの子は~!」 「ねー!うっちゃん可愛すぎぃ」 「もう好き~~!」  あ、なんだ冗談か……。女子三人に頭を撫でられたあとギュッと抱きしめられた。 俺の性別、一応腐『男子』なんですけど。そんな女子にするみたいな……慣れてるけど……。 「チッ、またあいつかよ」 「ハーレムとかうっぜぇ……死ね」  通りがかりの見知らぬ男子に舌打ちされた。そのうえ死ねって!地味に心に突き刺さるんだけど!? 『俺は』慣れてるけど、俺を見る人はそう思わないから……まあ、いいけどね。 モテ男はつらいなぁ!!(ヤケクソ)

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