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虎、馬る。③

 差し出されたままのコンドーム。  保健の授業だとか、性教育だとかで避妊具だって習った。でも、実際に、自分がそれを使うことなんてないと思っていたから使い方なんて上の空だった。  啓太先輩とセックスするときは、避妊具を、使う。の、かな?  妊娠なんて、できないのに?  首を傾いだままその小さな四角を眺めていた。  啓太は少し思案した後で、コンドームを自分の脇に置く。  「取り敢えず、眞澄が思うようにすればいいよ」  「コンドームは?」  「それは後でにしよっか」  提案と共に、腰を引き寄せられる。  瞼を閉じて唇が重なる。フワッとした感触に頭の中もフワッとする。  啓太の手が腹に触れる。カサカサした肉刺の痕がくすぐったくて、臍の下辺りに来ると擽ったい、がなんかモゾモゾした、落ち着かないのに変わる。  「……ン、」  じわじわと下腹が熱くなって来る。  「眞澄がしないなら、俺がしちゃうよ」  シャツの上からキスされた心臓が、きゅぅんって縮んだ。  「それは、ダメ……!!」  触れられながら、なんて、絶対できない。あんなキモチイイコトされたらなんにも考えられなくなってしまう。  「ダメ、です。」  指先がまだ惑う。  どんな風にさわればいいのだろう。啓太はどんな風に、さわっていたっけ。服の上から揉まれた。で、腰回りから、手が、入って……。  「えっ、と……」  恥ずかしくて、ドキドキする。ドキドキするけど、  「失礼します!!」  「ぅヴっ!」  力加減を間違えて上から握り込んだ。  びくんと啓太の体が跳ねて腰が引ける。それと同時に、パッと手を引いた。  「思いきりは、止めてくれ」  「は、はい」  苦笑いしながら呟いた啓太の股間から目が離せなくなる。  掌に、余った感覚。まだ柔い肉の弾力。  ―――これ、って、  自分の掌を見つめる。  長尺バット  翔太の言葉が耳の奥で聞こえた気がした。  ーーー長尺バットって、  身を屈めて上から啓太の股の間を見下ろした。少し布が持ち上がっていて、膨らんでいるのが判る。  「っ……」  そっと、その山に手を置いてみる。下で確かに拍動するものがある。  ーーー掌で、余るって、  眞澄の掌は決して小さい方じゃない。  ピアノをやっていたことも合間ってバスケットボールも片手でつかめる。  それでも、余ると言うことは。  口のなかに溜まってきた唾液を飲み込むと、こくりと音がなった。  ウエストに指を引っ掻ける。引き下ろすのに、引っ掛かりを感じる。  「ますみ、」  短い髪に熱い息かかかって顔をあげた。  ーーーぅあ、  きゅぅぅぅぅっ、と、心臓が縮んだ。息ができなくなるくらい、胸がつまる。  潜められた眉に、いつもより狭くなった目と眉の間。たっぷりの水を含んだ目。  「あ。」  強い腕が、眞澄を包み込んだ。

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