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キス、の効能⑤

 ベッドの端に腰掛けて、目の前に眞澄を立たせた。普段見上げてくる顔が、今は啓太を見下ろしながら緊張してる。  唇が少し尖って、顔が赤い。  ーーーこれでレツジョー抱くなって言う方が無理。  腰掛けた啓太じゃ、眞澄から身を屈めてくれないとキスができない。先にすべきだったかなと思いながら、細い腰を抱き寄せる。   「あ。」  間の抜けた風に言葉を吐き出した唇が、きゅっと結ばれて、解ける。  「あの、」  「キスがしたい」  強請る声で、眞澄の腰から、背中に指を滑らせる。ひくと、背中が震えた。  「眞澄は?」  誘導して問うとまた唇が結ばれて、小さくうなずく。  こんなにも、簡単なこと。  眞澄が求めるなら、なんでもしてやるのに。  唇が近付く。  少し、背筋を伸ばせば、眞澄の方から近付いてくる。啓太は口を開いて、舌を差し出す。柔い唇に舌先が触れる。  ひくん。と、抱いた腰が震える。  「座って」  足の間に、膝をつかせる。膝立ちの目線が、かっちりと合う。  「どんなキスがいい?」  髪を撫でて、問う。茶色いネコ毛が柔らかく指に絡み付く。爪先で耳の後ろに触れる。  「んっ。」  もぞがゆそうにたじろいだ鼻先を舌で触れる。触れて、そっと、外して、唇に唇を押し付けて、離す。  「こんなのと、」  唇に息がかする。眞澄の唇が物足りなそうに開く、そこに舌を差し入れる。  「ンぅ、」  項を引き寄せて、更に奥に忍ばせる。躊躇っていた小さな舌が応えてちろりと啓太の舌を舐める。それを吸い上げて自分の口に招き、柔く噛んでやる。みじろいだ躯を両腕に閉じ込める。舌を舌で擦って、裏までなぜる。口蓋を擽るとふるふると眞澄の躯が震える。  差し出された舌と突き出したままの舌の先、てろりと唾液が糸を引いた。  「……こっち、と」  どっちがしたい?  キスだけで蕩けた目が酸欠を物語る。正常な判断も遠慮も建前も全部取り払われた本能が眞澄を支配してる。  「……りょうほう」  唾液に照る唇を舌がなぞる。  「さわるだけのも、えっちなのも、したいです」  はふと、熱い呼気が肌に触れる。  「ん。判った」  頬に唇で触れる。柔らかい感触に熱が籠ってる。  深くなんて考えないでもっと簡単に甘えて要求して依存すればいい。  首筋にキスをする。シャツの裾から手を滑らせる。少し汗ばんだ肌が掌に吸い付く。  「せん、ぱ……んっ」  焦った声。  触りたいと思っているのは眞澄だけじゃない。細いウエストに指を添わせると、脇腹が逃げる。あいかわらずの中学ジャージ。シャツの上から臍に口付ける。  ―――参ったなァ。  我が儘を言って欲しいと思いながら、自分の欲が先行してる。  キスなんてしたら、そうなるに決まっているのに、したくなってしまう。  

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