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第8話
昼食をとった後は遊び疲れていたのか、すんなりとお昼寝してくれた。
すうすうと寝息を立てて眠る小さな純をベッドに運んで掛け布団をかけてやる。子供特有のぷにぷにした頬を指先でツンツンするが、起きる気配はない。
可愛い寝顔に癒されながら、小さくなった手を握って、まじまじと観察する。けれど、なぜこんなことになってしまったのか、皆目見当がつかない。昨夜までは普通に会話をしていたし、寝る時も変わった様子はなかった。
(……純が起きる前に夕飯の下準備と、明日の分の仕事も終わらせよう)
そう思って立ち上がると、純の瞼がパチリと開いて目が合った。
「あ……」
(嘘だろ……今寝たばっかなのに……)
「ふぇっ、ぅ、ぅ、うわぁーーーーん」
しかも何故か泣き出した。寝起きだからだろうか、あまり機嫌が良くないらしい。仕方なく他の作業は諦めて、泣いてる純を抱き上げる。
「よしよし、どうした? まだ眠い?」
眠くはなさそうだが、寝てくれることを祈るしかない。純の背中をさすって、あやしてやると、泣き止んで俺の胸で涙と鼻水とよだれを拭く。
「っ! そこで拭かないで……」
慌ててティッシュを取り、純の顔と服についた液体を拭うが、純の顔はすでに綺麗だし、服は吸収してしまったのか、大して拭き取れなかった。
「……あそぶ」
純の言葉に内心苦笑しながら頷いて、抱っこしたままリビングに戻る。散らかったままの玩具の近くに純をおろせば、ブロックを拾って何かを作り始めた。
「これ、おにーしゃんの」
そう言って渡されたブロックを受け取って、なんだろう、と考える。
「これ、なぁに?」
「いちごのあいすくりぃむ!」
「苺かあ。そっちは?」
純が今作っている物は、黄色だからレモンか何かだろうか。
「これはねえ、みかん!」
「そっか。純、みかん好きだもんね」
「うん。でもねえ、ほんとはいちごがいちばんすき!」
「じゃあ純が苺味食べて」
「ううん、おにぃさんにあげる。さっき、おいしいのつくってくれたから、おかえし」
そう言ってニコニコ笑う純は天使のように可愛い。
「食べていい?」
「だぁめ。まだ、おしたくできてないからまってて」
「でもアイス溶けちゃうよ?」
純は、うーん……と唸ったあと、みかんアイスを持って俺の前に座る。
「じゃあ、あいすくりぃむだけね」
「いただきまーす」
パクパクと食べる振りをすれば、俺のことをじっと見ながら首を傾げる。
「おいし?」
「うん、凄く美味しいよ」
「えへへ。よかった。ごはんももってくるね!」
ぴょこぴょこと動き回り、お皿に見立てたブロックの上に色々乗せて、零さないよう慎重に持ってくる純。動きがいちいち可愛くて思わず口元が緩む。
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