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第3話
まだ開いてた居酒屋で晩飯をすませ、タクシーに乗る。
ヒロは酔いと疲れからか、シートにもたれ掛かると寝息を立て始めてしまった。
……そんなヒロに。
ゆっくりとシートの上を、手を滑らし、小指を重ねる。
ほんとは手を握りたい。
けれど、起きてしまうと云い訳できないので、僕の精一杯。
僅かにふれた小指から伝わる、ヒロの熱。
僕の熱も伝わっているのかな。
……いつか。
いつかこの僕の身体をたぎらせる、熱を全て、ヒロに伝えられる日が来ればいい。
……なんてね。
そんな、夢見がちなこと。
「ん……」
苦笑いすると、ヒロが小さく身動ぎした。
慌てて小指を離すと目覚める。
「起きたんだ。
もう着くよ」
「ん、ああ……。
なんか、夢見ててさー」
「夢?」
「ケイが俺を……」
云い掛けたヒロが、急に真っ赤になって視線を逸らす。
どうも願望が漏れていたようだ。
まだ暫くはもう少し、自重することにしよう。
【終】
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