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   side:タロ(5〜9)

ご主人様のスケッチブックに裸の男の人の絵を見つけた時、なぜか僕はものすごく嫌な気持ちになった。 その男の人は顔も裸の体もきれいで、絵のモデルにぴったりだということはわかる。 ……でも、なんでこんなにたくさんあるの? 表紙に一年近く前の日付が書いてあるそのスケッチブックは、半分以上がその男の人の裸や服を着た絵で埋まっていた。 まるでこれ、今の僕みたいだ。 このスケッチブックではなく、最近の――ご主人様が僕と一緒に暮らし始めてからのスケッチブックは、半分以上……いや、7、8割のページに犬や人間の姿の僕が描かれている。 じゃあ、もしかしてこの人も僕みたいに、ご主人様と一緒に暮らしていていたのかな。 けど、それにしたって……。 確かに僕とその男の人は、同じようにスケッチブックに描かれてはいるけれども、しかし僕とその人の絵には決定的な違いがある。 それは、人間姿の僕の絵が全て服を着ているのに対して、その男の人の絵のほとんどが裸だということだった。 しかもただ裸だというだけではなく、なんだかその男の人が交尾をしている時のメス犬のように見える絵まである。 ……なんか、もやもやする。 いや、もやもやというより、むしろむかむかする。 この男の人の絵を見ていると、なぜだかわからないが、腹が立って仕方がない。 見ていると腹が立ってくるのに、それでもその絵から目を離すことができなくて、僕がその絵をじっと見ていると、やがて僕がその絵を見ていることに気付いたご主人様が、慌てた様子で僕からスケッチブックを取り上げた。 ―――――――――――――――― その後、その絵の人はご主人様の恋人だったのだと聞いた。 そしてご主人様が男同士で交尾をする人なのだと聞いて、僕は驚き、そしてその相手がスケッチブックの絵の人だったのだと聞いて、また嫌な気持ちになった。 そしてさらに、ご主人様は男の人と交尾する人なのに、僕とは交尾したくないと聞いて、なぜだかわからないけれど、すごくがっかりしてしまった。 ご主人様と僕は恋人同士ではないのだから、ご主人様が僕と交尾したくならないのは当然のことだ。 それなのになぜ、そのことに自分ががっかりしてしまったのか、その時の僕はよくわかっていなかったのだけれど。 ―――――――――――――――― その後、あの絵の男の人――光さんがこの家にやってきて、それでようやく僕は自分の気持ちがわかったのだ。 僕が思わず人間に変身して光さんのことを追い出してしまった後、ご主人様に光さんのことが嫌だったのかと聞かれて、僕は自分が光さんに嫉妬していたこと、そしてそれは自分も光さんみたいに、ご主人様の恋人になってご主人様と交尾がしたかったからなのだと気付いた。 そしてそれと同時に、僕は自分がすでに失恋していることにも気付いてしまったのだ。 ご主人様は僕と交尾したくないと言っていたのだから、僕は逆立ちしたって、ご主人様の恋人にはなれない。 そのことに気付いた僕は、ご主人様とろくに話もせずに犬に戻り、ご主人様のそばにいるのもつらくて、そのまま二階に上がってしまったのだった。 ―――――――――――――――― けれどもその翌日、僕に人間に変身する力をくれた方と話をしてみて、このままご主人様を避けていてはいけないと思った。 ご主人様は、僕と交尾はしないと言っていたし、それは恋人にもならないということだとは思う。 けれども、僕はご主人様と恋人になりたいし、交尾もしたい。 その願いを両方叶えるのは、たぶん無理だと思う。 けれども、僕がご主人様に交尾してもいいかなと思ってもらえるように一所懸命がんばったら、もしかしたらご主人様も一回くらい僕と交尾をしてくれるかもしれない。 ……うん、がんばってみよう。 がんばって、もし一回だけでも交尾してもらえたら、そしたらそれを大事な思い出にして、また今までみたいな飼い犬とご主人様という関係を続けていこう。 そう決心すると、胸がきゅっと痛む。 けれどもその痛みを無視して、僕はちょうど来てくれたノリさんに、男同士の交尾のやり方を教えてもらったのだった。 ―――――――――――――――― 夜になって、ご主人様が二階に寝に行ってから、僕は人間に変身して、お風呂でこっそりノリさんに教えてもらった通りに準備した。 お尻の中を交尾できるように準備するのは大変だったけれど、ご主人様に交尾してもらうためには必要なことなのでがんばった。 準備が終わると、裸のままで二階に上がった。 そして目を覚まして驚いているご主人様に、僕の正直な気持ちを伝えて、ご主人様が僕と交尾したくなるように、がんばってあの光さんの絵のまねをした。 そうしたら! そうしたら、ご主人様は僕と交尾したいと言ってくれたのだ! その上、僕のことが交尾がしたいという意味で――つまり、恋人にしたいという意味で好きだとまで言ってくれた。 僕はもう、うれしくてうれしくて、そして、力が強くなって人間の体が大きくなってしまうくらいに、すごくすごく幸せだった。 そしてその後、ご主人様は僕のことを、とても大切に抱いてくれた。 初めての交尾はちょっと苦しいこともあったけれど、すごく気持ちよくて、そしてうれしくて幸せで。 そして、初めての交尾で色々いっぱいいっぱいになってしまった僕は、ご主人様に自分のおちんちんをこすってもらって子種を出した後、そのまま気絶してしまったのだった。

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