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13 モデル 2☆

夕食の片付けを終えた後、交代で風呂に入ってから二階に上がった。 「まず背中を描きたいから、パジャマの上だけ脱いでくれるか?」 布団を敷きながらタロに頼むと、タロは素直に「はい」とうなずいてパジャマの上を脱いだ。 「こっちに背中向けて布団の上に座ってくれ。  先に暖房はつけておいたけど、寒かったら前は布団かけててもいいぞ」 「大丈夫です。  十分部屋あったまってますから」 「そうか?  だったら手を頭の後ろで組んでくれるか?  あ、いつも通りポーズがつらくなったら無理しないで言ってくれていいからな」 「はい、わかりました」 タロが指定したポーズを取るのを待って、さっそくスケッチブックに鉛筆を走らせる。 腕を水平に上げるポーズなので、ちょっぴり生えている脇毛がよく見える。 タロは犬の時は毛がびっしり生えた毛皮におおわれているのに、人間の時は体毛が薄いのが不思議だ。 「タロの背中と腕、筋肉がきれいについてていいなと思ってたんだよ。  意識して鍛えたんじゃなくて、散歩で自然についた筋肉だからきれいなのかな。  ……よし、次は足も描くから下脱いで立ってくれるか?」 「はい」 タロはうなずいて立ち上がると、お尻の穴から出している尻尾を器用に穴から抜きながら、ズボンとパンツを脱いだ。 「あ、手は自然に下ろしてくれていいから」 「はい、こうですか?」 「うん、そう」 タロがポーズを変えている間に、こちらもスケッチブックのページをめくる。 新しいページには、さっきじっくり描いた上半身は大ざっぱな形をさらっと描くだけにして、下半身の方を丁寧に描いていく。 張りのある足腰は単純に描くのが楽しいだけではなく、見ているとエロい意味で楽しいというのもある。 もっともタロの方は後ろ向きだから、自分が俺にどんな目で見られているのか、気付いてはいないだろう。 「うん、じゃあ次は前を描かせてくれ。  ずっと立ってると疲れるし、今度は座ろうか。  えーっとそうだな、右膝だけ立てて、左足は伸ばしたままで……そうそう」 わざと股間がちらっと見えるポーズを指定したのだが、タロはまったく恥ずかしがる様子がない。 ヌードは初めてだとはいえ、モデル自体は慣れているので、モデルモードに入ってしまっていて、自分が裸だという意識が薄いのかもしれない。 ……っていうか、犬の時はいつも裸だしなあ。 毛皮はあるけど。 そんなことを考えながらも、タロを描く手はすいすいと動いていく。 タロとスケッチブックに交互に視線をやりながら、タロのしなやかな体や腹に並ぶ副乳を描いていると、そのうちにタロの顔がじわじわと赤くなってきた。 「……あの、ご主人様。  あまり見ないでください……」 控えめな声でそう口にしたタロは、少し目を伏せている。 あ、もしかしたら、やっと恥ずかしくなってきたのかな? 裸でモデルになること自体は恥ずかしくなくても、俺の視線を感じているうちに、タロはだんだん恥ずかしくなってきたのかもしれない。 たぶんそれは俺が純粋な画家の目でタロを見ているのではなく、下心もたっぷり含んだ目で見ているせいもあるだろう。 「え? けど、見なかったら描けないぞ?」 「……あっ、そうですよね。  すいません」 俺がごく当然のツッコミを入れると、タロは素直に謝った。 そのまま俺は、何食わぬ顔をしてタロを書き続ける――ただし、意識的にスケッチブックを見ている時間よりも、タロを見る時間を長くして。 そうしているうちに、タロの顔の赤みは徐々に全身へと広がっていき、そのうちにちらりと見えている股間のほっそりとしたものが、少しではあるが反応しはじめた。 タロ自身もそれに気付いたらしく、真っ赤になりながら膝を立てている方の足をそおっと内側へ動かす。 「こら、タロ。  動いちゃだめだろ」 「あっ……すみません」 俺が注意すると、タロは慌てて足を元に戻す。 けれどもそうすると俺に恥ずかしいところを見られてしまうということがわかっているせいか、その表情はひどく恥ずかしそうで少し涙目にすらなっている。 ああ、やばい、かわいい。 いじめたい。 タロの恥ずかしそうな顔を見ていると、もっと恥ずかしがらせたいという欲求がわいてくる。 好きな人を肉体的にいじめたいとまでは思わないものの、言葉責めで恥ずかしがらせたり、恥ずかしがるようなことをさせたいと思ってしまうのは、我ながら悪い癖だとは思うのだが、それでもやめられない。 「ん、ま、もうだいたい描けてたからいいや。  次ポーズ変えてくれるか?  両膝立てて開いて……こういう感じで」 「ええっ?!」 俺が実際にそのポーズをしてみせると、タロは思わずといった感じで声を上げる。 それはそうだろう、俺がして見せたポーズをタロがやれば、股間が反応しているのが丸見えになってしまうのだから。 「ん? どうした?  このポーズやるの、つらそうか?」 「あの、いえ、つらいっていうか……」 「出来なかったら無理にやらなくてもいいぞ。  今日はもう何枚も付き合ってもらったしな」 タロが困った様子でもじもじしているのを見ていると、さすがにちょっとかわいそうかなという気がしてきたので、俺はこのへんで引くことにした。 けれどもどうやら、それが逆にタロの負けず嫌いなところを刺激してしまったようだ。 「あっ、いえ! やります!」 タロは慌ててそう答えると、赤い顔をしながらも膝を立て、それをそろそろと開いていく。 その恥ずかしそうな様子を見て、いったんは収まりかけた俺の欲求にまた火がついた。 「タロ、そこ、どうしてそんなに大きくなってるんだ?」 「あっ、あの、その……」 俺に反応している股間を指差されて、タロはおろおろしている。 「俺に裸見られて描かれて、気持ちよくなっちゃったか?」 「う……はい…ごめんなさい」 そう涙目で謝るタロは、めちゃめちゃかわいかった。 とうとう俺は我慢できなくなって、スケッチブックと鉛筆を放り出す。 「謝らなくてもいいよ。  俺に見られて気持ちよくなっちゃうタロ、すごくかわいい。  かわいいから、もっと気持ちよくなろうな」 そう言うと俺は素早くタロに近づいて、股間のほっそりしたモノを握った。 「キャン!」 思わずと言った様子で声を上げたタロのモノを優しく擦り上げると、タロのモノはあっと言う間に大きくなる。 「タロ、もっと気持ちよくしてやるから、布団に横になって。  あ、仰向けは尻尾痛そうだから、横向きでいいや」 「……はい」 タロが俺の言った通りに横向きに寝転ぶと、俺もその隣のタロより下の位置に寝転がって、タロの足の間のモノをぱっくりと咥えた。 「あっ、ダメ、ご主人様、汚いから……!」 「汚くないよ。  さっきお風呂入っただろ?」 「やっ、しゃべっちゃ、だめ……あっ…」 タロは文句を言いながらも、気持ちがよさそうな声を上げている。 「……あっ、だめ、だめ…、子種、でちゃう……!  ご主人様、放してください……!」 子種ってエロ過ぎだろ!と思いつつ、俺は構わずにそのままタロを追い詰める。 そうしてすぐに犬のような切なげな鳴き声を上げてタロが出したものを、俺はごくんと飲み込んだ。 タロはあまりに過ぎた快感のせいか、しばらくぼんやりしていたが、やがてはっと何かに気付いたような顔になって慌てて起き上がった。 「ご主人様!  もしかして僕の子種、飲んじゃったんじゃ……!」 「ああ、うん、飲んだよ」 「なんであんなの飲むんですか!  お腹壊しちゃいますよ!」 真面目に俺の体を心配して怒ってくれるタロの様子が微笑ましくて、俺は思わず笑ってしまう。 「笑いごとじゃありませんよ!  早く吐き出して下さい!」 「あー、ごめんごめん。  けど飲んでも別にお腹壊したりしないから大丈夫だよ」 「あ、そうなんですか?  ……よかったー」 俺の説明でタロはようやく安心した顔になり、その後ちょっと恥ずかしそうな顔になった。 「だからと言って、わざわざ飲まなくても……」 「あー、ごめんな。  タロがかわいかったから、つい、な。  けど、タロが嫌だったんならもうしないから」 「あ、いえ、別にいやって言うことでは……」 恥ずかしそうな様子でそう言ってうつむいたタロは、その拍子に俺のスウェットの股間が盛り上がっているのに気付いたらしい。 「……あの、ご主人様のも、僕、口でしましょうか……?」 「あー……うん、それもいいんだけど、出来たら口でしてもらうより、タロの中でイキたい……その、タロと交尾がしたいかな。  タロはどうだ? したくないか?」 「あっ、いえ、僕もご主人様と交尾したいです!  それじゃあ、下からオリーブオイル取って来ますね!」 元気よく答えて立ち上がったタロを、俺は慌てて止める。 「あっ、タロ!  オリーブオイルはもう使わなくていいから!  専用のローション――ええっと、油みたいなやつ買っておいたから、今日からはそっち使おう」 「あ、はい。わかりました」 「さっきみたいに横になってて。  ローション取ってくるから」 「はい」 そうして俺が押し入れに隠しておいたローションとコンドームを使って、俺たちはめでたく2度目のセックスになだれ込んだのだった。 ―――――――――――――――― さすがに2回目なので俺も多少は手加減出来たし、タロの方も体が慣れたらしく、今回はタロが気絶することはなかった。 それでもさすがにタロは疲れた様子だったので、後始末とパジャマを着るのを手伝ってやる。 そして、自分も寝巻き代わりのスウェットを着て暖房を消し、すでにタロが寝ている布団にもぐり込んだ。 タロに腕枕をしてやると、タロはいつものように俺に背中を向けるのではなく、こちら側を向いて俺の胸に抱きつき、そしてふわっと微笑んだ。 「あ、そうだ、タロ。  すごい今更だけどさ、お前、俺のことをご主人様って呼ばずに名前で呼んでくれてもいいんだぞ。  もう恋人同士なんだしさ」 タロにはずっとご主人様と呼ばれ続けて来たので、さっき2人で食事した時なども特にその呼び方に違和感は感じていなかったのだが、せっかくだから、この機会に呼び方を変えてもらってもいいだろう。 それに、さっきのセックスの最中にも何度もご主人様と呼ばれて、なんだかちょっとおかしなプレイをしているような気持ちになってしまったので、このままずっとご主人様と呼ばれているのも、ちょっとまずい気がする。 「えっ、名前で……ですか?」 けれどもタロは、俺の提案に微妙な顔をしていた。 「ん? 名前で呼ぶのは嫌か?」 「いえ、嫌というわけではないんですが、できたら今まで通りがいいなあって。  だって、ご主人様のことを(がく)さんって呼ぶ人は僕だけじゃないですけど、ご主人様をご主人様って呼ぶのは、これまでもこれからも僕だけですよね?  だから僕、できればずっとこのままご主人様のことをご主人様ってお呼びしたいなぁって思って。  ……だめですか?」 「ああ、そういうことか……」 タロは口には出さなかったが、おそらくは光が俺のことを学と呼び捨てにしていたのを気にしているのだろう。 タロの性格では、俺のことを呼び捨てにするのはためらいがあるだろうから、それならむしろ、光とはまったく違う、タロだけの呼び方を使いたいと思ったのかもしれない。 「……うん、タロがそう呼びたいんだったら、今まで通りでいいよ。  なんとなく名前でもいいんじゃないかと思ったけど、俺もタロにご主人様って呼ばれるの嫌いじゃないしな。  あ、けどこの前の元橋さんが来た時みたいに、誰か他の人の前ではご主人様じゃなくて名前で呼んでくれるか?  もしまた他の人に会うことがあったら親戚だって説明するから、それだとご主人様っていうのは変だからさ」 「はい、わかりました」 「ん、じゃあもう寝ようか」 「はい、おやすみなさい」 「うん、おやすみ」 そうして2人して目を閉じると、すぐにタロのぬくもりが犬サイズまで小さくなった。 俺はもう一度目を開けて、タロの犬の前足が自分の胸にちょんと乗っているのを確認して、ちょっと笑ってから再び目を閉じた。

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