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第9話
ベッドの上で、裸の背中に唇が落ちる。熱くて、触れられた部分から溶けそうだ。舌で舐められると、さらに溶けて、ベタベタ、ヌルヌルしてくる。
「ん、」と声が抑えられない。
「お前は、まったく」東城が言う。「苦くて、甘いよ」
溶けて、味合われて、食べられるのだ。
ため息交じりの彼の声が、背中越しに聞こえる。「甘くて、甘くて、依存性がある」
おまけに、とほうもなく高級品だ、と彼が続けている。
背中を甘噛みされる。肩甲骨から食べようとするのだ。指が、腰のあたりを溶かしにかかっている。その手は焼けるように熱い。
「お前が、サプライズプレゼントするなんて、な」と東城は言った。「すげえ嬉しいよ。本気でびっくりした」
そう言われると広瀬も嬉しくなる。声を出したら、かすれていた。
「来月を、楽しみにしてて」と言われた。
「来月?」何のことか頭が回らなかった。
「そう。お返しする日があるだろ」
「ああ」広瀬は眼を閉じた。
クチュッと淫靡な音がする。彼の言葉の意味が遠ざかり、感覚だけになっていく。
「すごくびっくりさせてやるから」とかなんとか言っている。
正直、驚かされるのは嫌いだ。
東城は、なにをするかわからないから、なおさらだ。
普通に美味しいマシュマロかクッキーでいいんだけどな、とぼんやり思う。
すると、急に強く突き上げられた。頭から背中にかけて、疼痛が走る。そこから全身が溶け出して、トロトロになり、形を失った。
そして、闇の中、甘い声だけが、残った。
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