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第31話

十四、 川沿いの街で (4) 「 一応、オーナーさんが3年後に取り壊す予定の物件なので、14戸のテラスハウスのうち6戸しか入居していないんですよ 」 それで玄関前とか人の住んでいる気配がない部屋があるんだ。 男二人で住む僕らにとっては隣に人が住んでいないというのはかえってありがたい。 「 それでは又少ししたら寄りますから、ゆっくり内見してください 」 テラスハウスは一階が個室2室。階段を上がると二階がLDKという、陽当たりも良い落ち着いた内装。 窓から見える景色。 公園には大きな木が生い茂り、川向かいの山も緑に覆われている。 二人でリビングの床に腰を下ろし、暫し外の空気を感じ合う。 少しの潮の香りと、新緑の青い匂い。 「 ここからだと草太は会社までどのくらい?」 「 こんな海そばに住むのは初めてだよ 」 「 ロードバイク欲しいな 」 「 早起きになりそうだ 」 とりとめのない話。ポツンポツンと落とす会話。 まだ家具のないこの部屋で僕らの生活が始まる? 「 あそこにサイドボードを置こう」 「 ダイニングテーブルはどうする? 」 「 馳の荷物は少なそうだな 」 「 うん、持ってくるものは……ないかもしれない 」 草太がそれを聞くとクスッと笑いながら、 「 嫁入り荷物のない嫁さんか。 大歓迎だよ、 馳だけでいい 」 少し居住まいを正した最後の言葉はしっかりと僕の心に落ちてくる。 キラキラ光る五月の陽射しが、 リビングの板の間に僕と草太の影を映す。 その影は やがてゆっくりと 重なった。 end ーーーーーーーーーーーーーーーー 最後までお読み頂きまして、 本当にありがとうございました。 この後は、 夢咲まゆさん企画 「コンテストはハードルが高いけど【子育て・子持ちBL】を書きたい人、いらっしゃーい!ヾ(≧▽≦)ノ!」 https://fujossy.jp/owned_events/17 に草太と息子雄介、そして草太の恋人馳を連れ、参加させていただこうかと思っております。 また、お読み頂けましたら嬉しいです。 honolulu

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