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第30話

十三、 川沿いの街で ( 3 ) 弓が繰り返すように蛇行する川沿いの道。地元の人たちは気軽におはようございますと声をかけてくる。 挨拶を返すのが少しくすぐったい。 後ろに山を抱えて陸橋を渡る江ノ電の音がガタンガタンと長閑に聞こえてくる。 「 江ノ電って4両なんだ 」 「 え?今気がついたの?」 「 ううん、昔は2両もあったと思って 」 「 はは、何年まえだよ。ああでも、 馳の親父さんたちこの近くに住んでるんだったな 」 「 うんもうちょっと◯沢よりだけどね 」 そんな話をしながらゆっくりと川沿いの道を歩く。 川の両側に道があり、その周りは住宅地と公園がポツポツと建物と緑を織り交ぜながら繋がっている。 公園にはボールを蹴る児や、散歩する人、犬と遊ぶ人。 5月の花は、 ハナミズキに池にはアヤメ、 フェンスにはクレマチス。 公園によく植えてあるツツジが白い花をポッカリと繁る葉の上に浮かばせている。 そんな穏やかな風景を目で追う日曜日の昼前。 朝早く起こされた僕は草太と一緒に川沿いの街に来た。 川にはカヌーを漕ぐ人や、今日は休みの日なのか静かに係留されてる漁船。そしてカモやウ、名前のわからない水鳥が何羽も泳いでいる。 「 東京の川ってあまりよく眺めないから、川って結構賑やかなんだ 」 「 眺めるのにちょうど良い幅の川だな 」 「 そっかヒューマンスケール 」 「 住むには良い街だろ 」 「 え?」 「 今日ここに来たのはさ、馳に俺の見つけた家を見てもらいたいから 」 歩く速度を少し早めた草太。 追いかける僕は草太のうなじが少し紅く染まっているのに気がついた。 「 草太……」 呼びかけても振り返らない草太。 少し後ろをついていく僕。 草太の足が止まったのは、煉瓦色の二階建てのテラスハウスが並んでいる、とても落ち着いた風情の建物の前だった。 「 ここ 」 一言、言って僕の方を伺う草太。 テラスハウスの間には芝生に踏み石の小道が敷かれている。スロープを少し降りその小道を行くと草の青い匂いが足元から上がって来る。 「 朝方少し雨が降ったんだな 」 そんな自然を感じるテラスハウスのひとつのドアの前に男の人が立っていた。 「 こんにちは、晴れて良かったです 」 明るく挨拶する人の手には鍵と図面。 不動産会社の人?

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