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第1話

「 影絵? 懐かしいね、昔お正月に集まるとおじいさんがお座敷の障子で 」 「 そうだっけ? 」 「 そうだよ指の長いおじいさんだから狐が大きいって、 草太喜んでたじゃないか 」 「 そんなこと、よく覚えてるな 」 (お前のことなら、忘れたことないから) 草太は自分の長男にマンションの和室の障子で影絵を見せながらのんびりと笑った。 (俺のことも、少しくらい覚えてないの?) その頃のおじいさんより確実に大きく長く男としてはスッと流れるような指先がイヌやキツネをつくりだし戯れるような仕草をして、長男を喜ばせているその姿に嫉妬する俺。 子どもと争っても仕方がないのに、、 離婚までは漕ぎ着けさせたのに、もう一歩子どもを忘れさせるところまではどうしてもできない…… やっぱり諦めろと言うのか…… 急にその指を掴んでしゃぶったらどんな顔をするだろう、指の股まで舐め回して俺の股間に押し付けたら怒るのだろうか? イライラして爪を噛んでる俺を見て 「 やめろ、馳、 爪が割れる。 お前爪が割れると、風呂に入るのも身体を洗うのも一苦労するぞ 」 口元だけで笑った草太は 余計な一言を足した。 「 ああそうか、俺に身体を洗って欲しいんなら、待ってろ。 雄介の次にじっくり洗ってやるから 俺が呆然と聴いてるそばで電話をかける。 「 あー恵?雄介風呂に入れたら迎えに来て、今夜は俺、デートだから 」 影絵のキツネが嬉しそうにコンと鳴いた。

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