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第1話

春が過ぎ、梅雨が過ぎ、初夏を迎えた。 外の温度は33度、室内はクーラーのお陰で23度まで冷えているが、ベッドの上でもつれ合う2人は、汗をかいていた。 「んッ……もっと……欲しい……」 葛城圭は大きくM字型に開脚した状態で、覆い被さって腰を打ち付ける加納恭一郎の眼鏡をそっと外し、ベッドサイドに置いた。 そして内側で暴れ回る彼の肉棒の感触に酔いしれる。 「な、恭一郎?」 「何だ?」 「なんでコンタクトにしねーの?」 「目に異物を入れたくない。それに、眼鏡がないと何も見えないほど、視力が悪い訳じゃない」 だから圭が眼鏡を外しても、ちゃんと彼の顔は見えている。 もっともっとと欲張っている時特有の、瞳の潤み具合まで丸見えだ。 恭一郎は圭の両膝の裏を持ち上げると、結合を深くせしめようと大きく腰を前に突き出した。 「んあぁっ、あ……」 「まだ足りないか?」 眼鏡を外されたお返しだとばかりに、圭が左側に結っている髪のゴムを外せば、たちまちのうちに黒い髪が彼の美麗な顔にかかった。 恭一郎はその髪を指で優しく払いながら、上体を傾けてキスを落とす。 啄むようにチュッと音を鳴らしながらのキスから、段々深いものへと変わっていく。 どちらからともなく互いの舌を絡めたくなり、口を開いてキスを交わし互いの口の中を舐め合い、舌を吸い合い、口の端から洩れる唾液などお構いなしで求め合う。 「んんんっ!」 恭一郎は、時折圭の性感帯しか突き上げないことがある。 まるで狙いすましているかのように、陰核と前立腺、そして最奥ばかりを穿ってくる。 今もそうだ。 キスで蕩けてしまいそうな気分だったのに、三つの性感帯を擦られて突かれて、圭はキスどころじゃないと咄嗟に恭一郎から顔を逸らした。 「どうした、圭?」 「……っ、やり過ぎだっつーの」 「イヤではないんだろう?」 「そうだけど……ひぁッ、ぁん……」 こうして何も考えられなくなって、最後に潮を吹かされる。 「恭一郎、離れて……ッ……」 絶頂に達して白濁を流すよりも、後孔の内側から透明な潮を吹かされることの方が、ずっと恥ずかしい。 その都度恭一郎に「離れて」と請うことも、また然りだ。 圭は恭一郎が一物を抜くのを待っていたかのように、無色な潮をベッドの上に撒き散らす。 いくらシーツの下にタオルを数枚敷いているからと言っても、頻繁に潮吹きを繰り返せばリネンが汚れてしまいそうで気掛かりだ。 「盛大に吹いたな」 「るせ……お前のせいだろ……うぁ!?」 息を切らせながら反抗的な言葉を口にすれば、膣の内側に再び恭一郎が入り込んでくる。 律動を先ほどより激しくし、圭を絶頂に導こうとしているのだという意図が感じられる。 圭は恭一郎の背に両腕を回すと、いなしきれない快感を爪先に込めて背中にそれを食い込ませる。 「あ、あ……イく……ッ……恭一郎……、一緒に……」 「ああ……」 恭一郎の汗が圭の頬に落ちる。 室内の温度をもっと下げたいと考えない訳ではないが、生憎リモコンはすぐ手の届くところに置かれていない。 ならば一度達してしまえばいい。 恭一郎のペニスが圭の肉襞に吸い付かれ、締め付けられ、かなり力を入れないと宙送もままならないが、圭と同じく自分もまた限界なのだ。 身体の内側から精がせり上がってくるようで、いつ射精してもおかしくはない。 「圭……ピルは飲んでいるな?」 「ん、飲んだ……」 「なら、もう少し堪えろ」 「え……ぅあッ、何、いきなり……イきそうッ……あぁッ、あ……」 2人が絶頂を迎えたのは、その直後だった。 「圭……」 恭一郎が愛しいパートナーの名を呼んで、小刻みに震える身体で同じ状態の圭の身体を抱き締める。 いつか読んだ書物には、「同時に達することはまず無理だ」と書かれていたが、恭一郎と圭に限ってはそれが可能だ。 もしかしたら、2人が(つがい)になったからだろうか。 それとも、単に身体の相性がいいからだろうか。 「恭一郎……俺、布団ビショ濡れにしちまってんだけど……大丈夫か?」 「バスタオルを5枚ほど敷いている。大丈夫だ」 「そっか……こうやってセックスが終わっても、帰らなくて済む……お前と同棲してよかったわ……」 恭一郎と圭は、番になってからすぐに同棲を始めていた。

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