21 / 21
第21話
圭は恭一郎の男根が十分に硬くなったところで、彼の上に乗ってアナルにペニスの先端をあてがい、ゆっくりと腰を下ろしていった。
すっかり濡れそぼった後孔内の肉襞が、肉棒に絡みつくのが分かる。
「あ、ん……」
少しずつ、ゆっくりと。
もどかしいけれど、そうしなければ自分が痛い思いをするだけだ。
「ッ……んぅ……」
カリの部分が挿入できれば、後はスムーズだ。
圭は一定のテンポで腰を沈め、とうとう根元まで挿入すると、額に浮かんだ汗を手の甲で拭った。
「ふぅ、全部挿った……」
「初めてだな、上に乗るのは?」
「嫌だった?」
「そういう訳ではないが、どういう風の吹き回しなのかとは思っている」
圭は上体を大きく傾けると、恭一郎の唇にキスを落とし、至近距離で唇を動かした。
「テンション上がってんの。就職のこと聞いたから」
「そうか」
「諦めてたから。普通の就職なんて俺にはできそうになくて、卒業したら恭一郎に養ってもらうのかなとか考えてて、そんな自分が情けなくて……」
「思い詰めるくらいなら、ちゃんと言葉にして言え。お前が就職についてそんな風に考えていたなんて、今まで知らなかった」
そう、2人の間には、まだまだ言葉が足りていない。
伝える術を知らず、今手探りで上手く伝える方法を探っているところだ。
「ベッドの上でだけ本音をさらけ出せると言うのなら、それでも構わない」
「え……?」
「実は俺もその方が有り難い。お前が辛い思いをしている時、すぐに抱き締めてやれるからな」
「すぐに抱き締めてやれる」というフレーズが、圭の心に優しく響いた。
そうだ、何かを伝えるのなら、いつだっていい。
どんな場面で伝えても、恭一郎は許してくれる。
「お前……ちょっと俺のこと甘やかし過ぎ」
圭は呼吸を整えると、膝を使って腰を上下に動かし始めた。
「あ、あん……」
だがすぐに両腰を掴まれ、恭一郎に下から突き上げられてしまう。
「恭一郎、だめだって……今日は俺が……」
「俺がこうしたいんだ、だめか?」
「……ッ……だめ、じゃない……」
悔しいが、やはり抽送は恭一郎の方が巧い。
圭が感じる部分を熟知していて、的確に、そして絶妙なタイミングで突き上げてくる。
「あ、あぁんッ……もっと、奥に……欲しいッ……」
そう言った瞬間、ぐるりと視界が一転した。
恭一郎が繋がったまま上体を起こし、圭をベッドの上に押し倒したからだ。
「奥に欲しいなら、こっちの方が突きやすい」
騎乗位から正常位になると、今度は恭一郎がイニシアティブを取った。
腰を掴んでスプリングの軋みが止まらないほど激しく突き上げ始める。
「ひ、ぁん……あ……あ……」
無意識なのだろうか、圭も下で腰を振っている。
潮吹きよりも、こっちの方が断然淫乱に見える。
まるで華が風に揺れて乱れ咲いているような感じで、時を経るごとにどんどん煽られていく。
「あ、恭一郎……も、イっていい?」
「ああ、いいぞ」
とはいっても、別に律動を止めてやる訳ではなく、達するのを手伝ってやることにした。
ピンと張った圭のペニスを手に収め、強く扱いてやる。
「あぁぁぁぁ!?」
ビクン──、と身体が跳ねたかと思えば、今度は後孔がギュッと収縮する。
前で達したことで後ろも敏感になり始めているのだろう、圭の喘ぎがどんどん大きくなっていく。
「あ、だめ……後ろも……イきそう……」
そう言われたところで、恭一郎は宙送をやめた。
圭のナカに肉棒を埋めたまま、じっと内側の肉襞の蠢きに神経を集中させる。
なんて卑猥なんだろう。
ひくひくと動いてペニスに吸い付くことを繰り返している。
「恭一郎の……ドクドクしてる……」
「お前もな」
「ね、イきたい……」
圭に請われ、恭一郎は彼の髪を結うゴムをそっと外した。
艶やかな黒髪が顔にかかって、まるで女性のように見える。
「ああ、イかせてやる」
そして律動を再開する。
激しく、奥を狙って、腰を全力で前後に振って、最大級の快感を圭の身体に送り込み始める。
「あ、あぁぁ、スゴ……イく……イクぅ……っ!?」
「俺も──ッ!」
同時に達した2人はしばらく繋がったままで、すっかり上がった息を切らせるが、やがて恭一郎が性器を引き抜き、圭の隣に移動して抱き締めてくれた。
その温もりが心地よく、乱れまくった圭はそっと目を閉じ、こう思った。
この男は、俺のものだ──、と。
(終わり)
ともだちにシェアしよう!