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第20話

寝室に移り、ベッドに倒れ込むと、圭が恭一郎を組み敷いた。 いつもは逆なのに、恭一郎の好意が嬉しくて、少し興奮気味なのだ。 相手を裸体にし、自分も裸体になり、生まれたままの恰好で素肌を重ねることが心地いい。 圭は口を開いて恭一郎の唇を覆い、舌を相手の口腔内に挿し入れてねっとりと舐め回した。 ミントの味がするのは、さっき2人で歯磨きをしたせい。 その風味がとんでもなく心地良く、一層唇を密着させて口蓋と歯列を交互に舐め、舌を絡ませ合う。 ぬちゅ──、という卑猥な水音が耳朶を打つが、それが起爆剤となって圭の身体からフェロモンを引き出し始めた。 組み敷かれている恭一郎も、時を経るごとに強くなるバニラエッセンスのような匂いに狂わされていく。 圭は恭一郎の耳を甘噛みし、首筋から鎖骨に沿って舌を尖らせて肌の上を滑らせ、胸の頂にある小さな突起を舌先で突いた。 「ッ……」 恭一郎の喉から、喘ぎとも呻きともつかなに声が洩れる。 彼のこんな声を聞くのは初めてで、もっと気持ちよくさせてやりたいと思うようになる。 圭は手だけを動かして恭一郎のペニスに触れ、それを手のひらで包み込むようにしてやわやわと揉んだ。 「うッ……ん……」 いつも自分がしてもらってばかりだった。 受け身でいることが心地良くて、攻められることに悦びすら感じていた。 だがこうして攻めてみるのも悪くない。 恭一郎の整った顔が妖艶に歪む様は、見ていてとても興奮を煽られる。 圭はゆるゆるとペニスを扱きながら、亀頭の割れ目を指の腹でなぞったり、裏筋を親指で強くなぞったり、陰嚢を揉んだりと、恭一郎の性器を攻め立てる。 「あッ、あまり……刺激するな……ッ……」 助けを求めるような声。 こんな声を出すヤツだったのかと、毎日のようにセックスをしている相手の新しい一面を知る。 圭は身体を下へ滑らせ、恭一郎の肉棒を口の中に含んだ。 「ッ……!?」 組み敷かれた身体が、ギシ──、とベッドのスプリングを軋ませる。 口淫されて感じているのかと考えるだけで、圭のペニスも後孔の内側も臨戦態勢になっていく。 とりあえず前だけなら自分で扱けばいいかと、圭は恭一郎の肉棒を口に咥えながら自分の手で自身の性器も扱き始めた。 一方で、恭一郎は自分で自分を慰めている圭の淫らさに、視線が釘付けになっていた。 淫靡で妖艶で、早く挿入したいと思ってしまうほどに美しい。 Ωとして華開き、夏の頃から本物の番となったから、いつもの彼がいつも以上に綺麗に見えるのだろうか。 それとも、こうして恭一郎を組み敷くのが初めてだから、何もかもが新鮮で、それゆえに美しく見えているだけなのだろうか。 「ッ、圭……放れろ、もう……ッ──!?」 ドクン──、と大きく脈打ったかと思えば、次の瞬間には圭の口の中に吐精してしまった。 だが圭は放れない。 それどことか、喉を上下に動かして精を飲んでいる。 「圭!?」 「ん……飲めるよ、恭一郎のなら」 顔を上げて妖しく笑い、唇に付着した性を手の甲で拭う姿には、凄味すら湛えた美しさを感じる。 これがいつも自分に組み敷かれている男の、本当の顔なのか。 否、いつもこういう顔をしているのに、恭一郎が見逃しているだけなのかもしれない。 「綺麗だな、お前は」 「そう?恭一郎も綺麗だよ。誰にも見せたくないって思うほどにね」 徐々に芽生え、心に根を張り始める、Ωとしての独占欲。 他の種別とは比較にならないほどに強く、相手に執着するそれを、恭一郎は受け止めてくれるだろうか。 だが、もう遅い。 夏に一度逃がしてやろうとしたのに、逃げなかったのが悪い。 「誰にも見せたくないのは、俺も同じだ」 「──!?」 「お前を、誰にも見せたくない。俺達は互いの顔を毎日見ていれば、それでいいんだ」 Ωに引っ張られるα。 それは恭一郎も自覚していることで、別に抗おうとは思わない。 それだけ、葛城圭という男が、魅力的だということだ。 圭はその台詞を聞くなり小さく頷き、恭一郎の胸をそっと押してベッドの上に寝かせた。 そして達したばかりのペニスを、挿入できる硬さになるまでゆるゆると扱き始める。 「んぅ……」 いつも喘がされてばかりだからなのか、恭一郎の裏返った声が新鮮に耳朶を打った。

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