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4 - side雅貴 大切なもの
「どわー!!マサ!!社会爆死!!マジで爆死!!」
突然身体に重しでも乗せられたかのような衝撃が走り、バカデカい声が耳に飛び込んでくる。
「…涼斗。重い。どけ。」
手で押し返してやると、なんだよマサは冷てえなぁー!!なんて言いながら涼斗は渋々離れて行った。
二年二学期の期末考査が終わった。明日から一週間の冬期講習を挟めば冬休みがやってくる。
来年は忙しくて遊ぶ暇なんてないんだろうなぁ、大学受験かぁ、どうしようかなぁ、なんて思慮にふける。
「なぁなぁ!講習終わったら3人でスケート行こうぜ!!!」
すっかり復活したらしい涼斗の楽しげな声に目をやると、いつの間にか黎も机の横に来ていて2人で冬休みの相談を始めた。
「あ、俺、家の寒稽古の手伝いあるから結構忙しいわ。年明けてからだときついかも。」
「寒稽古って剣道の!?マサん家の道場、正月もやってんの!?」
涼斗が心底驚いたような顔で聞いてくる。
「あぁ、じいちゃんの代もその前の代も正月から稽古つけてたらしい。親父もそれに倣いたいから手伝えって。」
涼斗があからさまにしょんぼりとした顔で俯く。
「でも29から31は部活もオフだし完全フリー。行けると思うけど?スケート。」
言ってやると涼斗がほんと!?よっしゃぁ!!と顔を上げ、今度は黎に年末の予定を問う。
「あー、俺も年明けは知り合いの店手伝うことになってるから年末のほうがありがたいわ。」
「やったー!じゃあ年末は二人とも空けておけよ!!」
フィギュアスケートの真似でもするみたいにピョンピョンと飛び跳ねて喜ぶ涼斗を横目で見ながら、黎に向かって尋ねる。
「店?お前バイトとかしてんの?」
「あー、バイトってほどのことではないわ。ほんと知り合いの手伝いって感じ。正月休み利用して在庫整理したいから力必要らしくて。」
「…お前、俺ら以外に知り合いいるんだな…。」
何言ってんだよ、なんて黎は拗ねて頬を膨らませた。
こいつが自分から関わってるなんてどんな人間なんだろう、と純粋な好奇心が湧いてきて気になった。
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