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5 - side紗月 お片付け

黎くんの話を聞きながら何気なく空を眺めていると、店の奥から大きな物音がした。黎くんと一緒に向かってみると、父親の代から日を浴びずに高く積み重ねられていた本たちが雪崩を起こしていた。 「あぁ…ここら辺の整理もそろそろしないと…」 「お店に並んでるほかにもこんなにたくさんあったんですね。」 「えぇ、父が手当たり次第に集めたものやお客さんに押し付けられたりしたものがほとんどですが…」 埃っぽいこの空間があまり好きではなくて掃除もたいしてしてこなかった。それが祟って手が付けられないほどたくさんの本が、薄暗い空間に無造作に積み重なっている。 「海外の本も結構あるんですね。」 本の山を眺めていた黎くんが何冊か手に取りながら言う。 「あぁ…父がロシア文学とフランス文学が好きだったので、そこら辺の翻訳本はかなりあるはずです。黎くんももし興味があれば持って帰ってもらって構いませんよ。…いや、こんな状態では読みたい本を探すのも至難の業ですね、すみません…。」 「もしよければ、掃除しましょうか?」 黎くんがさも当然のように、果てしなく申し訳のない提案をしてきてくれた。 「いえいえ、そんな。お正月三が日は店を閉めるのでその時にでも掃除をしておきます…。」 「だったらお手伝いさせてください!この様子だと人手があって困ることはないだろうし、その時読みたい本も探せるし…。」 「本当にいいんですか…?ではお願いしたいです…。」 正直なところ掃除は好きなほうではない。黎くんからのありがたい申し出を無下にする理由もないだろう。 こうして正月の掃除の計画を軽く建てた黎くんは、また明日と言って帰っていった。

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