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突然、鍵をかけていたはずの扉が開かれて中にいた二人の男子生徒は凍りついた。 「こんなところで何やってる」 鍵の束を携えて放課後の体育用具倉庫に入ってきたのは体育教師の郷野(きょうの)真一(しんいち)だった。 すると生徒の一人は大慌てで「すみませんでした!!」と叫ぶなり郷野の傍らを擦り抜けて走り去っていったではないか。 置き去りにされたもう一人の生徒は、ショックで打ちのめされ、後を追うことさえできなかった……。 先輩、行っちゃった。オレを残して。 「一年の藤崎だな」 倉庫の明かりを点けた郷野は急な点灯に眩しそうにしている生徒を見据えた。 十一月、秋から冬へ移り変わる季節にキャメル色のカーディガンを羽織り、チェックのスラックス、天然茶色を帯びた少し長めの髪。 身長も体重も平均値に若干届かない、華奢な体つきをしたその生徒は、確かに私立高校一年Cクラスの藤崎(ふじさき)(りん)だった。

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