凛の視線の先で郷野が殴られた。 昼休み、廊下での出来事だった。 派手に喧嘩をしていた二年生の男子生徒二人、その内の一人が出鱈目に振り回した拳が、仲裁のため間に入った郷野の片頬にヒットしたのだ。 凛はびっくりした。 周囲を取り囲んでいた生徒も喧嘩をしていた当人達も。 一人、平然としていた郷野は男子生徒二人を見据えて言う。 「ほとぼりは冷めたか、お前等」 先生、先生。 大丈夫……？ 凛が教室で母親お手製のお弁当を食べ終えた頃、二年生男子が殴り合いの喧嘩をしていると一年生フロアにまで伝わってきた。 凛自身は怖くて見物に行くつもりなどこれっぽっちもなかった。 だが、興奮したクラスメートに腕を掴まれ、上のフロアまで走らされて。すでに集まっていた生徒の向こうで罵声を言い合う上級生男子が視界に入っただけで、その場で竦み上がった。 そこへ一番最初に駆けつけた教師が郷野だった。