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ずっと、永遠
廉×京
※
その少年は、棺のような機械の中で時を止めていた。
それは、彼の脳を蝕む腫瘍の進行を止める為だ。だから少年は治療法が見つかるまで、と機械の中で冷凍保存されていた。
……けれど、今。
短かった少年の髪は、僅かだが伸びている。
治療中なので、ガラス越しの対面なのは相変わらずだが――それでも一歩、前進だ。
(七年は……もう、なんでしょうか? それとも、まだ?)
腫瘍を溶かす薬は、以前からあった。
だが七年前では、それは発症して数時間の患者にしか適用出来なかった。時間が経てば経つ程、脳出血を引き起こすなどのリスクが増えるだけで患者を救えなかったからである。
……けれど、今。
七年経った今、医学の進歩によりこの薬を使える範囲が広がった。
だからこそ、手術では切除不可能だった彼の――廉の脳腫瘍の治療が、こうして可能になり。
三十路半ばにはなったが、国崎はこうして愛する少年との再会を果たそうとしている。
「おじさんは、嫌……なんて言ったら、泣きますからね?」
眼鏡の奥で目を細め、国崎はそっとガラスを撫でた。
聞く者がいたら、あまりにも情けない台詞だったが――幸い、ここには冬眠治療中の廉しかおらず。仮に他の者がいたとしても、国崎は少年への愛を隠す事などしなかっただろう。
……そう、今でも。
一瞬で、彼を魅了した少年を。
孤独だった彼を選び、彼の為に死を振り払ってくれた少年を。
その存在全てで、彼に『永遠』を与えてくれた少年を。
国崎は、愛しているのだから――。
「廉」
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