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第1話
『小説家の須賀 賢人 さんが、新たな小説を出版されました。この物語はミステリーも含まれる恋愛小説となっており、現在累計発行部数は今までより大幅に増え─────』
「···うるさ」
テレビを切って、パソコンを閉じる。
自分の事をテレビで言われると、例えそれがいい事でも、恥ずかしいからか長くは聞いてられへんし、観たくない。
「はぁ···」
梓が俺のそばからおらんくなった日から、もう何日も何ヶ月も経った。俺のそばにおった時間は短いのに、今でも寂しく感じるし、出来ることなら戻ってきて欲しいとすら思う。
昔からそうやった。人にいい顔ばっかり見せて、後悔する。
誰にも迷惑かけへんから、この癖はやめられへんくて、いつになっても八方美人で、多分、いろんな人に陰口言われてるんやろな。
「あー、もう。何がミステリーも含まれる恋愛小説や···全部実際あったことやいうねん」
ニュース番組で取り上げられた俺の新しく書いた話。それは全部梓とのことやった。主人公は俺で、恋愛してる相手は梓。やけど物語の中でだけ梓は女の子やった。
勝手にミステリーとか言いよって。それこそミステリーや。
俺の心境のどこにミステリーさを感じんねん。そんなん感じ取ったんやったら俺はもっと魅力的なはずや。ミステリアスな男はモテるとか言うやんけ。全くモテへんわ。
心の中でひたすら愚痴を吐く。
そんな日はもう物語を書けないって知ってるから、気分転換に買い物に行こうって服を着替えた。
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