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第8話

泣きやんだ敬一の涙を指で拭うと、久しぶりに笑ってくれた。 なんかもう、それだけで嬉しくて。 再び重なった唇に、素直に目を閉じる。 唇を何度も重ねながら次第に押し倒されていき、首筋に這わされた唇に我に返った。 「……ちょっと待て」 「なんですか。 ソファーは嫌ですか?」 苛つくように敬一は俺の顔を見ているが。 「いや、確かにソファーは嫌だけど。 その、……俺がやられるほう?」 「そこは問題じゃないでしょ。 ……もう私、待てませんから」 「えっ、あっ!」 問答無用でベッドに突き飛ばされ、両手首を押さえつけられて唇を塞がれた。 やっと敬一が離れたときにはもう、あたまがぼーっとして、ネクタイをほどいて首元のボタンを外す、あいつをただ見ていた。 「……眼鏡」 「え?」 眼鏡を外そうとしていた敬一の手が止まる。 「眼鏡、かけたままがいい。 おまえの眼鏡をかけた顔、好きだから」 「……変態ですね、鷹也は」 くすりと笑われて顔が熱くなった。 そんな俺の頬を愛おしそうに撫でると、再び唇を重ねてくる。 いままでしたことない、恥ずかしい格好をさせられて、初めて意識が白く弾けた。 朦朧とした意識の中で敬一を見上げると、幸せそうに笑ってキスしてくれる。 なんかもう、人生で初めて感じる充実感に、敬一の手を握りしめたまま眠りに落ちていった。

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