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第7話
「……気持ち悪いですよね」
思わず手を伸ばしてぎゅっと敬一を抱きしめると、背中がびくりと大きく震えた。
「なに、やってるんですか……。
離してください」
「離さない。
……だっておまえ、泣いてるだろ?」
「やめてください。
優しくされると勘違いしたくなります」
「……たぶん、勘違いじゃない、から」
おそるおそるといった感じで敬一は抱きつくと、小さく嗚咽を漏らし始めた。
「……ずっとずっと、鷹也が好きだったんです。
でも、近付くと苦しくなるから、気付いてからは距離を取るように気をつけて」
「……うん」
「女性と付き合ってもすぐに別れて、特別な存在を作らないことに安心していました。
でも、結婚するとか云われたら、あたまではわかっているのに、耐えられなくて……!」
「……ごめんな」
震えてる背中を撫でながら、たまらなく愛おしく思ってた。
初めて抱く、確かな愛情。
……ああそうか。
きっと俺はずっと前から、敬一のことが好きだったんだ――。
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