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第6話

そんな状態がひと月も続き、とうとう耐えられなくなった俺はマンションに敬一を呼びだした。 「いったいどういうつもりだ?」 「……どういう、とは?」 敬一は荒れ果てた室内を見ても、全くの無反応。 いつもなら、少しは片付けろと怒るのに。 「おまえがこないから、部屋の中が片付かない」 「……家政婦を雇えばいいでしょう。 そもそも、ハウスキーパーは仕事外です」 「……俺が他人を家の中に入れるの、苦手なこと知ってるくせに」 「……結婚されるんですから、婚約者の方にしていただけば?」 ……はぁーっ、敬一の無表情な顔にため息が漏れる。 「なにが不満だ?」 「……反対に聞きますけど。 このあいだあんなことをした私を、よく部屋に入れましたね? その神経がわかりません」 「……」 ひと月前の、俺の足を舐める敬一が思い出されてかっと顔が熱くなった。 ……なかったことにしよう、そう思っていたのに。 「……ああ。 もしかして、感じていたのですか? それでもっとやって欲しい、と」 「ち、ちがっ!大体、なんであんなことっ!」 歪んだ敬一の笑顔に胸が苦しくなった。 じっと俺の顔を見つめていたと思ったら、ゆらり、敬一が立ち上がり迫ってくる。 俺の肩越しにソファーの背に片手をつくと……空いた手で、顎を持ち上げてきた。 無理矢理合わされた視線。 口元は笑っているのに、レンズ越しの瞳は泣き出しそうに歪んでる。 「……醜い嫉妬ですよ。 だって私は、ずっとあなたと、こんなことをしたいと思っていたのですから」 ゆっくりと近づいてくる敬一の顔を、間抜けにもただ見つめてた。 見つめあったまま唇が一瞬ふれて……離れる。

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