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第5話
月曜日。
あんなことがあって、敬一とどんな顔で会えば、そう思うよりも、敬一がこなかったらどうしよう、とそのことの方に恐怖している自分がいた。
「おはようございます」
「お、おはよう」
出社すると、いつも通りの敬一がいた。
ほっと胸をなで下ろしつつ、やはりどことなく、ぎこちなくなってしまう。
「どうかしましたか?」
「あ、いや、なんでもない」
……なんでこいつは、こんなに普通の顔でいられるんだろう?
俺が微妙に意識してしまう以外、いつも通りだと思っていた。
……でも。
一歩の距離を嫌にはっきり感じてしまう。
……昔は。
距離なんてなかった。
いつも同等で、笑いあって。
けど、いつの頃からか距離を感じるようになった。
ふれようと思えば届く、たった一歩の距離。
けれどその一歩は確実に拒絶を意味してる。
それでも学生時代はまだ曖昧で、気のせいだとすませてた。
しかし敬一が俺の秘書になって以来、その距離は明確になった。
同い年だというのに常に敬語で話し、プライベートでも鷹也、そう名前で呼ぶこともなくなり。
……それが酷く、悲しかった。
いつもなら一緒に部屋まできて、簡単な片付けをし、場合によっては飯まで作ってくれるのに。
あれ以来、マンションまでは送ってくれるものの、敬一が部屋にあがることはない。
おかげで部屋の中はめちゃくちゃだし、灰皿の上にはいつ火災が起きてもおかしくないほど、吸い殻が積み重なってる。
……まあ。
煙草は最近苛ついているせいで、本数が急激に増えたせいもあるが。
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