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第4話
風呂からあがると、またソファーに座らされた。
敬一は俺の足首を持ち上げると、傷口を確認している。
「……それで?見合いの方は?」
「ああ、うん。
もう何度もするのは面倒だし、あの人と結婚するわ」
「……そう、ですか」
びくり、敬一の肩が震えた気がしたのは……気のせい、だろうか?
「まあ、きっといつものように愛着は湧くだろうし。
長く一緒にいれば、もしかしたらちゃんとそういう感情も持てるかもしれないし」
「……」
「けいい……っ!」
急に黙ってしまった敬一に怪訝に思っていると、いきなり傷口を舐められた。
痛みで言葉がとぎれる。
「なに、やって……!」
「……なにって、消毒ですよ」
自嘲するかのように顔を歪ませたと思ったら、再び傷口を舐めてくる。
がっちりと動けないように足を掴まれ、何度も何度もねっとりと傷口に舌を這わされるたびに、びりびりとした痛みが走る。
「やめろっ、敬一……!」
「……ああ。
もしかして、痛みで感じてるんですか?」
「……」
口端だけで笑う敬一になにも云えなかった。
そんな俺に見せつけるように足先に口付けすると、……敬一は親指を口に含んだ。
「……っ」
舌を指に這わされると、ゾクゾクとした感覚が背筋を駆け上がる。
ぴちゃ、ぴちゃ、わざとらしく音をたてて足の指を舐め回しながら、上目遣いで敬一は俺の顔をじっと見ている。
なぜか俺は抵抗すればできるはずなのに、じっとしたままレンズ越しに敬一の瞳を見つめてた。
部屋の中には敬一が俺の足の指を舐める音と、次第に荒くなっていく、自分の熱い吐息だけが響いてる。
ピン!
突然、テーブルの上に置かれた携帯がたてた通知音に、敬一も俺も、同時に身体を震わせた。
俺の足から口を離した敬一がゆっくりと立ち上がり、泣き出しそうに顔を歪ませる。
「……鷹也は特別な存在など、作らないと思っていたのに」
久しぶりに呼ばれた名前にどきりとした。
でも、敬一はそんな俺にかまわず部屋をそのまま出て行く。
その言葉は……俺の心に重く深くのしかかった。
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