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第1話
”運命の番”この言葉に心浮かれていたのはいつまでだったか。
”運命”その言葉を信じていたのはいつまでだったか。
そもそも信じていた頃なんて合ったのだろうか。
そもそも存在するものなのか。
「運命…ね。」
「急にどうした?」
俺の幼馴染である高梨 秀 が返事をする。
「いや、この雑誌で特集組まれててさー。」
そう言い、手元にある雑誌を見せる。
「なんだ、びっくりさせるなよ。今更、運命を信じられても困る。あ、珈琲のおかわりいる?」
俺は秀に目もくれずそっとカップを渡す。
「そういうのは動作じゃなくて言葉で伝えましょうねー。鈴くん?」
芝居がかった口調で俺を諭す。
「珈琲おかわりしますー。」
そう言うと秀は俺の頭を撫で、珈琲を入れに行った。
俺、古川 鈴 は秀とルームシェアという名の同棲をしている。
幼馴染で家は隣同士。極めつけは同い年で、当たり前のように仲良くなったふたりは互いの親の勧めもあり、次の発情期に番契約をすることになっている。
秀はα、鈴はΩだ。気のしれた相手であり、互いに惹かれ合う部分もある。しかももう社会人だ。これがふたりの中で最善だった。
運命など、居るはずがないのだから。
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