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第1話
「おれ、春から一人暮らしするから」
学年末テストも終わり、あとは卒業式を待つだけという頃、ベッドでごろごろしていた雄介に向かって投げかけられた言葉。
予想だにしていなかった雄介はベッドの上で飛び起き、ローテーブルでコーヒーを飲んでいる秀彦の肩を掴んで、がくがくと揺さぶる。
「なっ、なんでっ!」
「…色々あって」
「だからっ!なんでって!」
カタン、と置かれたマグカップ。ゆっくりと伸びた手が、雄介の首筋を撫でた。
「…もう、ムリだから」
それだけ言い残すと、ハンガーに掛けていたコートを羽織って部屋から出て行ってしまった。
一人残された雄介は、撫でられた首筋に掌を充てがってみるも、秀彦の言葉が頭の中でぐるぐると回る。
「…ムリって、なに、が…?うそ、いやだ…」
ぼろぼろと零れ落ちた熱い雫が、シーツにいくつもの染みを作っていった。
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