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第1話
人より少し、賢かった。
人より少し、両親の喧嘩が多い家庭だった。
だから人より少し達観した物の見方ができて、そんな僕を大人は『いい子』だと言った。
聞き分けのいい子。
手のかからない子。
そんなの褒め言葉じゃないといくら心の中で叫んだって、誰にも届かなかった。
『いい子』には、なろうと思えば誰だってなれる。だから僕は、いわゆる問題児と呼ばれる子に、『自分』をみんなに見せられる人に、ずっと憧れていた。
『いい子』と言われる度に『お前は無個性だ』と言われているようだった。
だからって、身体に染み込んできた『いい子』は簡単には変えられない。僕は授業中に騒ぐことも、掃除をサボることさえも出来ない臆病者だった。
参考のためにそういう子に近付けば、先生は「誰にでも優しい子ね」と笑う。
……違う、僕はそんな褒められ方がしたいんじゃない。もっと、僕の個性を認めてほしい。
そんな人より少し曲がった考え方を持っていた僕が変わったのは、紛れもなく『先生』のおかげだった。
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