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第7話

何かが怖くなって、メールを送る手が止まる。 2日、1週間、1ヶ月、半年ーー。 どんどん送る間隔が開いていって、それなのに先生を忘れることはできなかった。 『友達もメアド教えてほしいって?まぁ、あいつならいいけど。変わってんなぁ……お前しか知らないメアドだったのに』 『最初に誕生日を祝ってくれたのはお前だよ。彼女みたいだな』 『もっとメールしてきてくれてもいいのに』 時々くれる甘い言葉に、胸が焼かれる。 伝えたくて、伝えられなくて。先生に追ってほしいって気持ちもあって。 それでも時間は進む。僕は青春を生きていて、先生と違う場所を歩んでいる。 『そろそろ彼女はできた?恋愛経験値ゼロだから、ちょっと心配なんだよな。恋は盲目っていうから、言いなりになっちゃいそうでさ』 それを痛感したのがこの言葉だった。 なんで?先生は僕を好きでいてくれてるんじゃないの?だったらどうしてそんなことを聞くの? やっぱりかと落胆して、当たり前だと冷静な自分が慰める。 先生はどうせ、本気で言ってたわけじゃない。 『心配には及びませんよ、今も恋愛とは無縁の世界を生きてますから。僕なんかを好きになってくれる人なんていませんって』 だって、唯一それを伝えてくれた先生も嘘だったんでしょう? そんな皮肉を込めたつもりだった。なのに。 『お前には良いところ沢山あるって。自信持てよ、俺が付き合いたいくらいなんだから』 意味が分からない。 本当に、意味が分からない。 僕は先生を好きでいてもいいの?先生は僕に、どんな返事を期待しているの。僕が躱さなかったら、まっすぐ向き合ってくれるの? 本当は付き合えそうな女の子ならいた。 彼女といるのは心地が良かったし、彼女もたぶん、そういう気で僕と居た。 2人でカラオケに行って、小さな旅行をした日には、お揃いの物を送りあって。 でも無理だった。彼女に見せている自分は『いい子』の部分で、先生みたいに自分の全てを見せれる存在ではなかった。 だから初めて自分を見せた日、ケンカをしたその日のあと、彼女とはだんだん疎遠になっていった。 ネガティブでどうしようもない、自分の嫌いな自分を見せてさえ好きだと言ってくれたのは、先生だけだった。

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