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第51話

 その部屋には大きな窓があって、ベッドに横になっていても外が見える様に造られていた。  ベッドの上で一日の殆どを過ごす彼にとって、その窓からの景色だけが外との繋がりだった。 「体調はどうです?」  窓を開けて風通しを良くしながら訊くとベッドの上で彼はニコリと微笑んだ。 「永絆が来てくれたからとても良いよ」  まだ三十代後半の男とは思えない痩せ細った体と、青白い顔色。  会いに来る度に弱々しくなる彼に永絆は無理に笑って見せた。 「大学は楽しいかい?」 「はい、新しい友人も出来て何とかやってます」 「それは良かった。永絆は努力家だから僕も将来が楽しみだよ」  少し長く伸びた髪を窓から入った風が揺らす。  白い彼の項が露になって、そこに刻まれた噛み跡が見えた。  彼とは永絆が公園で暮らしていた時に声を掛けられ知り合った。何か困っているのではないかと純粋に心配をしてくれた。  最初は警戒していた永絆だったが、彼の項に噛み跡があるのを見つけて事情を打ち明けた。 「菫《すみれ》さん。やっぱり連絡するつもりはないんですか?」 「ないよ。何度も言ってるけど、僕が死んでも連絡はしないで」

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