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第67話

「永絆……」  どこまでも優しいキスに瞳を閉じた。  温かい涙が流れてきて、それを藍の指が拭う。  啄む様な短いキスと、熱を伝え合う様な長いキスを繰り返しながらやがてどちらからとも無く深い口付けを交わす。  口唇全てを食む様にして、何度も息を荒らげながら交わすキスに頭の中が痺れていく。  口内に入ってきた藍の舌に一瞬肩を震わせると、呆気なく舌は出ていってしまい口唇も離れていった。  もっとキスが欲しいのに何故離れていくのかと藍を見れば、心配そうに見つめ返される。  ああ、そうか。藍は肩を震わせた事を拒否だと思ったから離れたんだ。そんな事ないのにと、永絆は笑みを浮かべて藍に口付けた。 「怖くないよ。傷付いてもいない。だからやめないで」  キスを、やめないで。 「永絆……」  また重ね合った口唇は柔らかくて、しっとりとしていた。  おずおずと入ってきた藍の舌がまた離れていかない様に自らの舌も差し出して、遠慮がちに絡め合った。  唾液がぐちょぐちょと水音をたてる。いつの間にか夢中で絡め合った舌は、吸い上げられて藍の口内へと移動していた。 「ん……」  どのくらいの時間、そうやって口付けを交わしていたかわからない。  息が切れて、酸欠でフワフワした感覚のままゆっくり名残惜しがりながら離れた口唇は腫れ上がって痛いくらいだ。  コツンと額を藍の肩に乗せて体を預けると髪を撫でてくれる大きな手のひら。  愛しさが溢れてしまいそうで藍の服をぎゅっと握り締めた。

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