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第69話

 暖かい腕の中で眠りについた。  一緒にご飯を食べて、交代でお風呂に入り、着替えに藍の服を借りた。永絆が普段着ているサイズより大きいシャツは洗濯したてなのかいい匂いがした。藍と同じ、花の匂いだった。  テレビを見ながら温かいミルクティーを隣に並んで飲んだ後、ベッドへと手を引かれ腕枕をされて髪を撫でられた。  額やこめかみに小さく口付けを落とされ、髪を撫でる手が気持ち良くなってきて次第にうとうとし始めると藍がそっと「おやすみ」と囁いた。  永絆も返事をしようと口を開いたが睡魔に負けてしまい、声にはならないまま夢の中へと入っていった。  菫が逝ってから数日、眠れない日々を送っていた。  胸の中のぽっかりと空いた喪失感に睡眠欲が奪われてしまって、真夜中になっても暗い部屋でポツリと座って朝が来るのをぼんやり待つ。そんな日々がいつまでも続く気がして怖かった。  けれど、藍の腕の中で久々にぐっすりと眠れた。夢も見ないでスヤスヤと。  藍の鼓動を感じて、肩の力が自然と抜けた。  好きな人と共にベッドで眠るというのに不思議と緊張はしなかった。それはここに来てからずっと藍がひたすら永絆を甘やかして、優しく接してくれていたからだ。

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