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第72話

 定期検診の為に中根の診療所に訪れた永絆は最近の体調の事を中根に相談した。  菫が亡くなって三ヶ月が過ぎ、藍の部屋に入り浸るうちに暑い夏は終わりかけていた。 「発情期が来ない? いつから?」 「正確には来てる感じはするけど、フェロモンが薄くなってる気がするんです。藍の家で寝泊まりする様になった頃から」  発情期じゃない時でも藍に対してあんなに強いフェロモンを出していたのに、中根が処方した薬の効き目が良いのかこの三ヶ月程は強い発情期もなく藍の傍にいてもヒートで理性を失うという事もなかった。  あれだけ近付けない事に悩まされていたのに、傍にいると決めた途端、また体質が変わってしまった。 「藍とは番ってないんだよね? 性交渉は?」 「……いえ……その……」  中根は医師として真剣に聞いているだけなのは分かっているが、やはりこういう話は恥ずかしい。  藍とは殆ど毎日一緒に過ごして同じベッドで眠っているけれど、まだ結ばれてはいない。それだけが目的ではないし、藍の腕に抱かれながらだとぐっすり眠れる。今はまだその時ではないと藍が言うのだから、その時が来るのを大人しく待っている。 「発情期中でも藍は平気なの?」 「一応、発情期になったら自分の部屋に戻って籠ってたんですけど、藍と出逢ってからずっと薬を飲んでも効かなかったのに今は発情期が来たことも気付かないくらい何の変化もないんです」

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