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第84話
「藍に抱いて欲しい……。番うとか、そんなの考えなくていいから。藍が好きだからもっと藍に触れてほしいんだ」
問題は山積みで解決策はまだ無くて。
本当は問題を全てクリアにしてからの方が良いとは分かってはいる。藍もそのつもりでいるんだということも。
全ての不安を取り除こうとしてくれている藍に、こんな風に求めたら困らせてしまう事も重々承知の上で、それでももっと藍に触れてほしい。
「……永絆……」
ゆっくりと触れるだけの口付けをした後、ぎゅっと永絆を抱き締めた藍。
早鐘を打っているのはどちらの心臓なのか区別がつかないくらいに強く抱き締められて、身体が熱くなる。
「永絆……オレだって永絆を抱きたい。毎日我慢してるんだ。一度でも抱いたら歯止めがきかなくなる」
「藍……」
「それでも……オレを」
その答えの代わりに藍の背中に腕を回して服を掴んだ。
「永絆……」
そのままソファの上に押し倒され、藍を見上げる体勢になる。
視線が合った先に居たのは雄の目をした藍。
高鳴る心臓がやけに響く中、永絆はその鋭い瞳に手を伸ばした。
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