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第83話

 一度だけでいいから抱かれたいと望む事は罪だろうか。  藍を苦しめてしまうのだろうか。  何か考えがあって手を出さないというのなら、その考えを知りたい。そうじゃないなら藍の全てで壊れるほどめちゃくちゃにして欲しい。  一緒に居ることで欲が強くなった。藤が言った言葉が胸に突き刺さる。  一緒に居れば居るほど、辛くなる。 「番にしたくないから……?」  大きく目を見開いて驚いた顔で永絆を見つめる藍。  自分の身体が小さく震えている事に気が付いて手を強く握り締めた。 「永絆……オレがお前を今すぐ抱けばお前の不安は消えるのか? オレの覚悟を信じる事がそれで出来るか?」  今、ここで藍と繋がれても不安が消える事はないと永絆は気が付いていた。ほんの一時、満たされる事はあってもまたすぐに不安になる。  藍がこの項を噛んでくれるまでは、どんなに抱かれても不安は押し寄せてくる。  紫之宮という名前が邪魔をして、一番信じたい相手の覚悟さえ信じきれないのだから。  けれど、その問題とは別にただ純粋に求めている。 「オレはただ……もうキスだけじゃ足りないんだ」  もっと求めて、欲してほしい。  藍の腕の中で守られるだけじゃなく、衝動のままに愛してほしい。  尽きない欲望に嫌気がさす。こんなふしだらなΩを藍はどう思うのか。

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