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第86話
花は、香りを出して虫を呼び、蜜を与え花粉を付着させ遠くへ運ばせる。
藍はΩのフェロモンを花の様な匂いだと言った。永絆は花の様に甘い匂いがすると。
永絆も藍から花みたいに甘い匂いを感じた。
お互いが近付くと永絆からフェロモンが溢れたのは番である藍を呼び寄せる為で、近付く事が出来た今、そのフェロモンを出す理由がなくなったから発情期ごと治まったのかもしれない。
藍の胸に顔を埋めながら、永絆はそんな事を考えていた。
「ふっ……」
その思考を妨げる様に服の中に潜ってきた手が永絆の素肌を滑った。擽ったいような、ムズムズするような感覚に思わず息を漏らすと藍の口唇がそれを塞いだ。
溶けだしそうな熱を舌と舌で分け合いながらお互いの口内を行き来する。身体の芯が痺れて頭の中がぼんやりとしてくる。
発情期の感覚に似てると感じた。感じてすぐに自分は藍に対して発情期でもないのに発情しているんだと悟った。
Ωの本能ではなく、藍を深く想って欲情しているのだと。
「んっ」
藍の口唇と舌が首筋を這って鎖骨へと下りていく。肌全体が敏感になった身体はたったそれだけでむず痒い快楽を拾う。
捲られたシャツの山を越えて藍の舌は身体の中心を線を描くように舐めていく。鎖骨の間から臍まで一直線に這った生あたたかい舌に永絆の身体はビクリと飛び跳ねた。
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