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終章 第188話
毎日は平穏に過ぎていく。
桜が緑の葉だけになって、暑い夏に凛と咲く向日葵の黄色が眩しい季節を越え、残暑がしぶとく主張した頃、小さな小さな生命の産声が響き渡った。
その声は新しい未来を切り開く激しい感情の爆発。
握りしめた小さな拳からは幸せが溢れていた。
***
何もかもが初めての育児を藍と共に何とかこなす日々は、大変な事も多かったけれど喜びはその倍以上にあった。
大学へ行きながら、紫ノ宮の家の仕事も父親から教わっていた藍はいつも忙しくしていて、産まれたばかりの赤子の不規則な生活に疲れ果てていた永絆とはすれ違う事が多かった。
それでも時間を作っては少しでも永絆を休ませる為に子供をあやし、いつまでも腕の中に包んで慈しみの瞳で我が子を見つめる藍の姿に、永絆もまた癒され救われていた。
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