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第189話
出来るだけ自分達で世話をしたくて沢山いる使用人や、その為だけに雇われていたベビーシッターの介入を断っていたが、藍の母親の一言で周りの助けを素直に受け入れる事にした。
「みんな、貴方達の家族なのよ」
彼女の言葉は時に厳しくもあり、時に深い愛情が込められていた。
彼女がいなければ紫ノ宮の中で永絆は孤立していただろう。今では使用人の誰にでも怯える事無く話しかけられる。紫ノ宮の中を牛耳っているのは間違いなく藍の母親だった。
沢山の人に支えられ助けられ、気持ちにも余裕が出来て我が子への愛情もより深いものになった。
夜、まとめて眠ってくれるようになった子供の寝顔を見ていると涙が出そうなくらい幸せになる。
こんな幸せが自分にやって来るなんて思いもしなかった。Ωである以上、何事も期待してはいけないと思って生きてきた。譲れないものがあっても諦めなければいけないのだと。
けれどもう、何一つ諦める必要はない。譲れないものがあるなら簡単に手放してはいけないのだと学んだ。必死でもがいて、縋り付いて、泣き落としでもみっともなくても、これ以上は後悔はないというくらいまで足掻いていく。
それは時に他人を不愉快にさせ、嫌われてしまうかもしれない。それでも後悔をするよりはやれる事をやり切ってから反省すればいい。
欲張りに、貪欲に、Ωだって誰よりも幸せになっていいのだと主張していきたい。
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