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第2話

 逢いたかった。  でも逢いたくなかった。  それでもやっぱり逢えたら嬉しくて、思わず笑みがこぼれた。  ああ……この人なんだと。  この人が運命なんだと心が弾む。 「永絆《なずな》」  耳元で囁いた名前に彼は満面の笑みを見せた。  恋なんだと。  出逢ったあの日からずっと彼に恋をしているのだと気付くには十分な瞬間だった。 「オレは、藍《あい》」  永絆の手を握って彼は自分の名前を告げた。  友人達が周りにいるのも気にしないで、ぎゅっと強く握られた手はとても熱かった。 「……藍」  きっとまた逢えるという予感はあった。  それが運命なら、必ずまた出逢えると。 「永絆……」  少し永絆より背の高い藍を見上げると、目と目が合った。  瞬間、心がざわついた。ドクンドクンと激しく脈打つ心臓に、身体中が熱くなる。  立っていられない程、力が抜けて崩れ落ちる様に藍に凭れかかった。  藍の身体も酷く熱かった。 「……永絆、少しだけ我慢してくれ」  言っている意味が分からないまま頷くと突然、藍に横抱きにされた。そしてそのまま走り出した。  驚きながらも落ちない様にと彼のシャツを掴む。  甘く、強い匂いが全身から漂っている。  構内を走る藍と抱き抱えられる永絆を通り過ぎる生徒達が振り返る。  きっと彼等は気が付いた筈だ。この抑えきれない匂いに。  Ωが発する発情のフェロモンに。

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