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第17話

「触れて……どうするっていうの? ヒートを起こしたオレをここで抱く? こんな……こんな場所で理性を失くして抱かれたら満足するの!? 他の誰かにも抱かれてワケわかんなくなって、そうなっても構わないなら今すぐ傍に来て抱き締めてみせてよ!!」  頭の中がぐちゃぐちゃで酷く痛んだ。  近付けないのは藍の所為じゃないのに、彼を責める言葉しか出てこない。  こんなぐちゃぐちゃな感情の運命の番なんて藍も呆れてしまうだろう。その方がいい。さっさと自分の事など放り出してしまえばいいんだ。 「ごめん……そうだな、こんな人がいる場所で言うことじゃなかった……」  優しい言葉をかけないでと言えずに顔を伏せた。  これ以上期待させないで欲しいから。 「でも、出来ることなら今すぐ抱き締めたいよ」 「……出来ないくせに」 「ああ……今は出来ない。だけど必ず、抱き締めるから」  そんな風に言われると、期待がまた膨らむ。  彼と番える日が来るのではないかと、また甘い夢を見てしまう。  例えそれが彼の一時の気まぐれだったとしても。 「これからは近くに居たら無視しないで声を掛ける。本当はずっと色んな話がしたかったんだ」  藍と話をしていたら目立つだろう。  一定の距離で会話をしていれば可笑しいと思われても仕方ない。  こいつは何者だ、とまた噂好きの学生が群がるかもしれない。  ――それでも。 「オレも……ずっと話したかった」  少しずつ距離を縮めていきたい。  物理的な距離ではなく、気持ち《こころ》の距離を。

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