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もしかしたら

その後はお互い無言で作業をした。 でも作業している間、何故か彼の笑顔が頭から離れなかった。 悪戯っ子の様に笑う彼を思い出し、そういえばまだ20歳なんだっけ、とか望月くんの顔ちゃんと見たの始めてだな、とか色々と考えていると作業は一瞬で終わっていた。 「よっし、しゅーりょー!」 同時に隣も終わったようで、彼の方を見ると時計を指差し「間に合ったな」と笑う。 (わぁ……) いつも怖くて目をそらしていたけど、改めて見ると端正な顔立ちをしていることに気付く。 童顔な僕とは違う、キリッとした顔。 これなら多少茶髪でも許されるよなぁ、なんて訳の分からないことを考えていると、いつの間にか作った資料は望月君に持ち去られていた。 慌てて立ち上がると、彼は同僚から完成した資料を集め、上司の机の上にドン!と乗せているところだった。 「どーよ?間に合ったろ?」 「……っ」 上司は、自分の息子と同じくらいの彼にしてやられ、怒りでぷるぷると震えている。 だが社長の息子に怒鳴るわけにもいかず、黙って資料を持って出て行ってしまった。 …なんか一瞬睨まれた気もするけど。 「あー、つっかれたー」 戻ってきた望月くんはダルそうにギシッと背もたれにもたれ掛かる。 (なんか、可愛いな) 「あの、望月くん」 「あー?」 「ありがとう…」 ほとんど椅子に沈んでいる望月くんにお礼を言うと、彼は少し面食らった顔をして、 「…別に」 と言って顔を背けてしまった。 その後はやっぱり不機嫌そうな顔のままで。 ……でも、いつものように怖い雰囲気は全くなくて。 僕は少しだけ、彼のことを「いい人かも」なんて思い始めていた。 END

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