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伝わった…の?
駄目だ。
このままじゃ望月くんには何も伝わらない。
あと麺が伸びきってしまう。
「そうじゃなくて!……あの、毎日カップ麺だから気になって…その…栄養、とか……」
意を決した僕は望月くんにそう伝える。
うん、ちょっとまだ怖いから目は逸らしたけど!
あとちょっと語尾が小さくなっちゃったけど!
だって余計なお世話とか言われたらさ。
そりゃそうだけど…ってなっちゃうし。
「ああ、栄養偏るって?」
「う、うん…」
「ははっ、なんだあんた。お袋みてーな事言うな!」
そう言って望月くんは面白そうに笑った。
良かった、気を悪くはしてないみたいだ。
というか、やっぱりこの笑顔、好きだなぁ。
(もっと見たいな)
いつもの仏頂面より、ずっと良いよ。
「野菜も食べなきゃ駄目だよ?」
その笑顔に安心してか、普段なら言わないようなお節介を言ってしまう。
鬱陶しがられたら…なんて、もう思わなかった。
「ハイハイ。じゃあ明日は違うのにするわ」
「ホントに?ありがとう!」
「…なんであんたが礼を言うんだよ」
そうしてまたニッと笑った。今度は少し呆れた風に。
でも良かった、と思う。
ウザがられたらどうしようかと思ったけど、ちゃんと話せばわかってくれるもんだね!
そして次の日ーー。
「………っ」
「なんだよ?」
「……ちっ……違ーーう!!」
「何でだよ?ちゃんと野菜入ってんだろ?」
「そうじゃないんだよーー!!!」
牛丼の入った袋をぶら下げて出社してきた望月くんに、僕はこの会社に入って初めての大声を出していた。
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