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忘れちゃったこと

「………」 「………」 オレの腕の中で眠る杉田さんの寝顔を眺める。外は真っ暗で時間はわからないけれどもう多分夜中だと思う。さっき『お時間です』って電話がかかってきたけどもっといたいって言ったら延長?ですねって言われてなんかいていいことになった。 ……目…赤くなってる… そっと杉田さんの目元を撫でると杉田さんはうっ…っと唸って目をきつく閉じた。 普段杉田さんと眠ることはよくあるけれど杉田さんはオレより後に寝て、オレより早く起きるから杉田さんの寝顔を見ることはそんなにない。それに杉田さんがオレの腕の中で寝るのもなかなかなかった。いつもはオレが杉田さんの胸や首元に顔を押しつけるようにして寝ている。 「……っふ…すぅ…」 「………」 杉田さんは丸まってオレのバスローブだけは握ったままくたぁっとなって眠ってていつもよりも幼く見えた。オレは杉田さんと一緒に横になっていたけれどなんだか今日は眠くなくて杉田さんの顔を見ていたかった。 「………っふぅ…」 「…う……」 気まぐれに杉田さんの顔に息を吹きかけてみると杉田さんのまつげがふるふるっと震えて少し嫌そうな顔をした。 「…………」 さっき杉田さんに言われたことを考えていた。 杉田さんは泣きながら杉田さんのことを忘れたオレを責めていた。 ………忘れちゃったのか…… ふにふにと杉田さんの柔らかい唇に触れてそれからそっと自分のものにも触れた。今日初めて知った杉田さんの唇は柔らかくて気持ちよかった。 ………もっと忘れていることがあるのかな…… 今度は今日ポプラの並木で言ったことを聞いて嬉しそうな顔をしていた杉田さんを思い出した。 「……っん…ん……めて…」 「………」 杉田さんの唇で遊びながらそう考えていると杉田さんが嫌そうな顔で顔をそっぽに向けてしまい何かを言った。 「……うぅ〜…ぎん…やめ、て…」 「………」 また杉田さんは『銀』の名前を呼んでいた。 ……… なんだかいらっとして執拗に唇を弄って遊ぶ。何度顔を背けても唇で遊ばれて杉田さんはまた嫌そうに口を開いた。 「……ん〜…ぎ……んむ…」 「……杉田さん…アルだよ…」 「ん…んんぁん………ぎ…」 「ちがう…『アル』…アルだよ……」 また『銀』を呼ぼうとする杉田さんの口に自分の口を押し当てて遮った。唇を密着させ、舌を絡め取って喋らせない。 「……っは…はぁ……あ、る…っや…」 「……ん…」 そして何度かそうやっていると杉田さんがやっと『アル』とオレを呼んだ。なんだか満足感を感じる。 邪魔がなくなって杉田さんも穏やかそうな表情に戻っていた。 「………」 忘れた記憶…… 杉田さんの体に腕をまわし、頭に顎を乗せる。杉田さんの匂いがしてなんだか懐かしいような気がした。 「……大丈夫だよ…杉田さん…」 そう言ってオレも目を閉じた。

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