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撮影初日

これが俺とアルのデート(仮)の顛末だった。予定よりずっとホテルに長居してしまったので外はもう明るくなり始めていた。でもそのおかげでと言うべきかアルのファンの人たちにも会わずに騒ぎを起こさずに帰宅が出来た。 ……後日検索してみたらあの時本屋で会った女子高生のSNSが拡散されて話題になっていたけど… とにかく、俺とアルのデート(仮)は無事終わった。アルはその後、銀の話をしても不機嫌にはならなくなったし、甘いものとゲームセンター目当てでだけど少し外出もするようになった。 今回のメインの目標であったラブシーンの改善についてはヒントを得られたのか不明で俺は不安だったが、アルは熱心に練習を続けていた。 そしてテレビや雑誌の撮影、そして演技の指導をこなすこと数日後…ドラマの撮影日がやってきた。 「よっ、よろしくっ、お願いします。」 「おねがいします。」 衣装を着せられて、メイクとセットをされたアルと一緒に撮影用のセットが準備されたスタジオに入る。心なしかアルもいつもより緊張しているように見えた。 「ではヒロインと主人公の友人との対面シーンからお願いしまーす。アルさんはこちらにお願いします。」 「!!」 早速スタッフの人から声が掛かる。チラッと見上げたアルは唇を引き結んで硬い表情をしていた。やはり緊張しているみたいだった。 「……」 大きく息を吸ってから吐いてまず自分の気持ちを落ち着かせる。それからアルの腕にそっと触れた。 「…アル」 「…?」 「大丈夫だよ…あんなにいっぱい練習したんだもの…」 「………」 「……始めの時みたいなお世辞じゃなくて本当に上手になったと思うよ。それに俺…アルの出るドラマ見るの楽しみにしてるよ。」 「…うん…」 そう伝えるとアルはまだ緊張してはいたものの柔らかく笑ってセットにむかった。スタジオの端に移動して思わず手を合わせて祈りながら現場を見守った。

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