156 / 172

温泉休暇

アルとの仕事にもなれて、この間のドラマの仕事で無事、アルのマネージャーを一人でこなせると認めてもらったころ… 「わーい!!温泉だー!!」 「先輩!!荷物は自分でもってください!!」 「…杉田さん…あれ食べたい…」 「………」 健斗が駅に着くなり駆け出し、猛がそれを叱りながら追いかけ、アルは俺の服を引っ張ってねぇねぇと限定ソフトクリームをねだる。昔も見たことがあるようでない光景だった。 至る所からもくもくと白い煙が立ち上り、少しだけつんとした硫黄の匂いがする。俺はぼーっとしながらその様子を眺めていた。 ……な、なんでこんなところに… 今俺らは温泉に来ていた。 ことの発端は数週間前、社長に呼び出されたことから始まった。俺はやっとマネージャーとして一人で働かせてもらえるようになったし、先のドラマも成功したこともあってこれから一層仕事を頑張るぞと燃えているところだった。なのできっと新しい大きな仕事だと意気込み、「働きたくない」と駄々をこねるアルを引きずって社長室に向かった。なのに… 「ねえ学、温泉好き?」 「…え…?」 「温泉よ、お・ん・せ・ん」 「え…ど、どとらかといえば…好き…ですが…」 「そ!それは良かった!」 そういって社長が山田さんに目配せすると山田さんがやって来て俺に封筒をくれた。促されるまま開封するとそれは温泉旅行のチケットだった… お、おんせん…? 理解が追いつかず顔をあげて社長を見つめる。目があうと社長はニコッとして嬉しそうに言った。 「アル、学、休暇をあげるわ。」 「…へ…?」 「…キューカ?」 俺の隣でおやつを与えられ大人しくしてたアルも顔をあげ、二人で社長を眺める。 「あー!!良かった、知り合いから宿泊券いただいてたんだけどこういう仕事しているとなかなかまとまって休みがとれなくてね〜、輝明も和也もどうしても外せない時期だったから良かったわ〜」 「え…えぇ…?」 社長は相変わらずの笑顔のままだった。そしてサイドこっちを見て微笑んだ。 「アル、学、休暇をあげるわ。」

ともだちにシェアしよう!