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猛の回想

ドンドンドン… 旅館について、荷物を整理し、オレも先輩もお風呂に入って少し経った頃、誰かが部屋をノックする音がした。先輩も気づいたみたいで視線を落としていたスマホから視線を上げる。 「…、誰か来ましたね。」 「開けてくる!!」 「あっ、先輩ちゃんと…」 「「誰か確認してから開けてくださいよ」でしょ!!わかってる!!」 「……」 先輩はハイハイって感じでオレの発言を流し、玄関までかけて行った。律儀にドアの前で誰ですかー?と声をかけているのが聞こえてくる。 今日は学さんに誘っていただいて温泉に連れてきてもらっていた。元々は学さんと頬付先輩…もといアルさんの休暇のためにともらったチケットが余ったそうだ。 久々に…と言うか本当に頬付先輩が大学進学のために空港で旅立った日以来に再会した先輩は見た目は髪色を除けばそんなに変わっていなかった。 当時いくら嫌だのなんだの言ってたとはいえ、お世話になった先輩だったし情もあった。学さんから記憶がなくなってしまった経緯なんかについてもざっくり聞いていたから再会した時は思わず目頭が熱くなった。ただアルさんは見た目はそっくりでも中身は頬付先輩と全然違った。まず何よりも素直だ、そして幼い。なんだか実の妹の理沙を見てるような気持ちにすらなった。今だにそのギャップには慣れてないし、世間知らずな発言に驚くこともあるけれど、ふとしたときに嬉しそうにしている学さんを見てると見つかってよかったなと本当に思った。なんでも再会したきっかけもなかなか運命的だったようだし、本当に縁のある2人なんだなと思う。この調子で記憶も順調に回復してくれるといい。 ………個人的には少しくらいアルさんの素直さとか可愛げみたいなのもある方が嬉しいけれど…… そんなことを考えているとドアを開けに行った先輩が戻ってきた。けれど後ろからさっきのノックの主と思われる誰かもついてきていた。それはタイムリーなことに学さんだった。学さんはなぜか眉毛を下げてしゅんとした表情をしている。紺庄先輩も心配そうだった。

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