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第1話
上質なレザーケースを開いてお気に入りのシザーを取り出す。
細くて長い薬指にハサミを絡ませてしなやかに髪を切り始める。
動くラインは彼のセンス。踊るように髪が舞う。
カツンカツンと耳障りのいい音が耳に届き
髪の切れる音だって彼にかかればメロディに聴こえる。
かすかに触れる指先はひんやりと冷たくて気持ちいい。
今日もまた満たされた気持ちで美容室を後にする。
玄関先で見送ってくれる彼の視線を背中に感じながら。
吹雪
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